
まさかと思った。ドナルド・トランプ米大統領が今年9月、ホワイトハウスの執務室で「トランプ・ゴールドカード」を説明するまでは。今月10日、彼がトゥルース・ソーシャル(トランプ氏自身のSNS)で同カードの公式申請サイトを紹介すると、“現実自覚タイム”に陥るほかなかった。
同カードは、高額の寄付や投資を条件に、米国の永住権に準ずる滞在資格を付与するビザプログラムだ。米政府が関税爆弾でも足りず、個人に15億ウォンの永住権商売に乗り出すとは思ってもみなかった。
また、ビザなしで米国に入国できる電子渡航認証システム(ESTA)の申請も難しくなるとのニュースも聞いた。5年間のSNS情報を提出させ、身辺情報を洗いざらい調べるということだ。彼らの幼稚で無礼な振る舞いには苛(いら)立つこともあったが、これにはかなり違和感がある。
9月に米ジョージア州の現代自動車とLGエナジーソルーションの建設現場を米移民当局が急襲し、数百人の韓国人労働者を逮捕した事件は、予告編のようなものだったわけだ。「ウォーターゲート事件」を特ダネ報道したボブ・ウッドワード氏が、昨年末出版した『WAR』(邦題 WAR〈3つの戦争〉)で「トランプは史上最も無謀で衝動的な大統領」と評したことに頷(うなず)かざるを得ない。だからこそ多くの人々が問う。「これがわれわれが知っていたアメリカなのか」と。
米国は、韓国人には「恩恵の国」と見なされている。これは韓国動乱や冷戦時代を経てつくられたステレオタイプだ。しかし米国はわれわれに非常に近いにもかかわらず、米国を正確に知っているかどうかには、少なからず疑問がある。
「アメリカは戻ってきた」と強調したジョー・バイデン前大統領や、「米国を再び偉大に」と叫ぶトランプ氏のリショアリング(生産拠点の国内回帰)は外見が違っても、本音は自国の利益を強要する保護主義貿易だ。米国の歴史が持つ共通のDNAだ。これを無視して皮相的に判断すれば、錯覚とステロタイプに陥るほかない。昨今の状況はわれわれが知っている米国でないと、興奮したり怒ったりすることではないということだ。
国際舞台で続いていた米国の独走は止まった。中国の「崛起(くっき)」(台頭)が予想を超える速さで進んだためだ。流れを変えるのは簡単ではないようだ。トランプ氏の迷走ぶりは、それだけ米国が切羽詰まっていることを意味している。米中覇権争いで韓半島はどのような状況か。抜け出すどころか生存が脅かされるほどだ。綱渡りに先立って自強要求が殺到する理由だ。
同盟が守ってくれるはずだという無駄な期待も捨て去るべきだ。地政学の専門家ピーター・ゼイハン氏は著書『各自図生(おのおのが生きる道を図る)の世界と地政学』で、「韓国の成功を可能にした世界秩序は崩壊しつつある」と説き、「産業構造の見直しにとどまらず、社会政治的な構造全体を変えなければならない」と述べている。
12・3非常戒厳令から1年が経過したが、権力闘争や政争は繰り返され、民生は後回しだ。統合や和合に代わって憎悪が蔓延(まんえん)し、疎通不能社会に近づいた。このままでは自滅だ。やめなければならない時だ。
(パク・ビョンジン編集委員、12月18日付)






