厳しくなる日中関係を韓国が注視して、日本旅行の代わりに中国人の韓国訪問が増えるのではないか、日中貿易が制限されれば韓国が代替する道が開けるのではないか、等々、良くも悪くも日中対立で韓国が“反射利益”を受けると予想しているのだ。
現在、韓国での中国の評判は良くない。日本で中国人の不動産投機、健康保険はじめ福祉サービスの不正受給、運転免許証の切り替えなどが問題となっているのと同じように、韓国でも中国人の「3大ショッピング」が批判されている。
月刊朝鮮(12月号)に「23歳女性記者のソウル大林洞・加里峰洞訪問記」が掲載された。ソウル市内で中国人が集中している地区の探訪記である。そこを訪れようとした理由は、前述のように韓国における中国人問題の現場を見てみようということだ。
3大ショッピングとは、「中国人が納付した健康保険料よりも多くの医療特典を享受する『医療ショッピング』、不動産を投機目的で買う『不動産ショッピング』、永住権取得後3年経過すれば韓国に居住しなくても投票できる『選挙権ショッピング』」のことを指す。日本と状況が似ている。
かつて「海水の至る所に華僑あり」と言われた。世界中どこでも中国人がいるという喩(たとえ)だ。現在、日韓で言われる中国人と「華僑」は単純に同じではない。主に東南アジアに居住する華僑は遠くは明代に渡っていった中国人などを祖先に持ち、現地の国籍を取得し、生活基盤を持って、中国との縁も薄くなっている。
これに対して、今の中国人はいわゆる「ニューカマー」、この数年、長くても20年30年の間に主に「出稼ぎ」として来た人たちで、永住する意思は薄く、まして帰化する考えはあまりない。
さて、女性記者の探訪記だが、地下鉄2号線の大林駅を降りると「コリアンダーの香りが鼻を刺激する」という。横浜でもニューヨークでも東南アジアの都市でも、中華街の匂いというのはこの香辛料に代表される。キムチやテンジャン(醤(ジャン))の匂いの立ち込める韓国の市場とは違うというわけだ。
この大林洞と加里峰洞に中国人が集中している。ソウルでも家賃が最も低く「朝鮮族と中国東北3省出身者」がほとんどだ。「朝鮮族」とは中国吉林省を中心に東北3省に多い中国籍を持つ“少数民族”だ。李朝末期から日本統治時代にかけて朝鮮半島から移っていった人々の子孫である。
ここでは「政治的には共に民主党支持が強い」といい、2022年の大統領選では落選したが李在明大統領はここで50・98%の得票率だった。加里峰洞は大林洞よりももっと所得が低く、「朝鮮族を含む外国人の割合が28・9%」で「朝鮮族暴力組織員の抗争を取り上げた映画『犯罪都市』(17年)の舞台」だ。
町の視線を感じつつ、おっかなびっくり漢字(中国語)の看板だらけの通りを歩きながら、記者は「翻訳アプリ」を使って会話を試みる。韓国語がなかなか通じず、中国語がメイン言語となるソウルの異空間だ。商店にも違法SIMカードなどが“堂々と”売られており、「内国人出入不可」の張り紙がある店も。
ソウルで伝統的な中華街といえば明洞だが、それとは異質、異空間の「中国」が広がっている。ルポは町の描写だけに終わったが、この現実が「チャイナ・アウト」を叫ぶ市民たちの声をさらに高めるのだろうか。






