
アジア歴訪中のドナルド・トランプ米大統領が今回の訪問で北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記に会いたいと語った。同大統領はこれまで公然と金総書記に会う意思を明らかにしてきた。ただ現在としては金総書記がこれを受ける動機はあまりないように見えるというのがワシントンでの一般的な見方だ。
2018年「平壌の春」の当時と現在は情勢が大きく変わった。ウクライナ戦争を経てロシアが北朝鮮の後ろ盾となり、中国とも貿易が再開された。北朝鮮の核能力は当時よりさらに高度化し、ソウルとは堅固な壁を築いている。北朝鮮はもはや国連制裁の解除などには関心がない。
トランプ氏が米大統領だった時間は1、2期合わせて約4年9カ月になる。その間、北朝鮮と実際に対話をしていた局面はいくら長くみても2年にならない。にもかかわらず、トランプ氏がしきりに金総書記との会合に余地を置くのは、3回の首脳会談で心地よい注目を浴びた記憶のせいだ。公然とノーベル平和賞に対する野心をあらわにするトランプ氏は、ウクライナ戦争とガザ戦争に集中しているが、状況が悪くなれば、北朝鮮は最後の砦(とりで)となり得る。
その時、起こることは韓国には頭が痛いことが少なくないように見える。マンスフィールド財団のブルース・クリングナー上級研究員は最近、セゲイルボとのインタビューで、結局、トランプ氏と金総書記が対話を再開すれば、トランプ氏が北の非核化放棄を明示的に容認することはないだろうが、言及を避けて先延ばしにしたり、非核化を担保しない終戦宣言をつくっておいて、自身の功績にしてしまう可能性を憂慮した。十分に可能なシナリオであると思われる。
今回でなくてもトランプ氏は機会があれば金総書記と会おうとするだろう。1期ほどの事前準備もなく、自身が直接、劇的に金総書記と接触する方式でだ。彼らが結局再会すれば、韓国が選択する方法は一つだ。「積極支援」とはいうが、本質は、トランプ大統領を「密着マーク」して韓国の国益に反する合意ができないように彼を言いくるめ、おべっかを使い、説得しながら疎外されないように努めることだ。もちろんトランプ氏の在任中続けられる対米投資と同盟の現代化など、懸案が重なる状況において簡単なことではない。李在明大統領が、トランプ・金会談を励まし、積極支援する言ってトランプ氏の歓心を買おうとしたことには、こうしたことを念頭に置いた側面があると考える。
北朝鮮と事実上対話が途絶えて6年になる。トランプ氏のように予測不能な指導者に任せるには、あまりにも重大な事案だ。最大限慎重に、ゆっくり進まなければならない。
(ホン・ジュヒョン・ワシントン特派員、10月27日付)





