「アメリカか中国か」という二者択一は韓国にとって繰り返し訪れる外交課題だ。保守政権と左派政権が交代するたびに、韓国の外交は常に米中の間で揺れてきた。最近では、米韓軍事同盟で米側に軸足を置きながらも、経済で大きく依存する中国側に傾斜するという歪(いびつ)な形(安米経中)が顕著になっている。
米政府は新しい国家防衛戦略(NDS)を準備している。それは中国に対する軍事封鎖線とされる第1列島線(日本・九州~沖縄~台湾~フィリピン)をアジア太平洋戦略の中心に据え、中国に対する抑止を強化するために、日本や韓国といった同盟国に自国の防衛力を高めるよう要請するものになるとみられている。
韓国の李在明政権は中国・北朝鮮に対する備えを自前で行い、在韓米軍の負担も増やせと迫られることになる。「実用外交」を掲げる李左派政権はこの要請に応えられるのか。
そして歴史では岐路に立った時に間違った選択をしたことが多かった中で、李政権の対外政策、なかんずく対米、対中政策を巡って危惧する人が多い。月刊朝鮮(10月号)で在米で日本通でもあるパシフィック21の劉(ユ)敏鎬(ミノ)氏が書いている。
その代表例が9月3日、中国北京で行われた「戦勝節」への国会議長派遣だ。天安門の望楼には習近平国家主席を中心にして、プーチン露大統領、金正恩北朝鮮総書記が居並んだ。ブッシュ元米大統領なら「新・悪の枢軸」とでも呼んだところだ。
そこに李在明大統領本人は行かなかったにしても、国民の代表たる国会議長と、さらにもう一人、与党の重鎮であり金大中元大統領の最側近だった朴(パク)智元(チウォン)氏がいた。朴氏は文在寅政権では国家情報院長を務めている。
この光景を米国が快く思わないだろうとは誰でも想像がつく。李政権の“二枚舌”と断じたかもしれない。その直前の8月25日、李大統領はワシントンでトランプ大統領を前にして「平和の伝道師」だと持ち上げつつ、自らは「ペースメーカー」と宣言していたからだ。
ペースメーカーとは「先頭に立って助ける」あるいは「仲介する」という意味合いのようで、劉氏は「李大統領のボランティアの役割は、トランプ―金正恩、トランプ―習近平を仲介することだ」と解釈する。
劉氏はもう少し深読みして、李大統領の狙いは自らが習主席と「韓中首脳会談」をすることにあるとみている。今月末には韓国慶州でアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれる。この場で習主席と会談し「実用外交の成果」をアピールしたいのだろう。
だが、劉氏は韓国が中国に重点を移していくことには強い危惧を示す。理由は二つだ。中国が権威主義国家で、かつ軍事的脅威を強めていることは言うまでもないが、加えて、いくら中国経済が世界2位で世界の工場だとしても、「米国が主導する西欧自由民主主義国家の経済圏の半分にすぎない」からだ。
中国が天安門望楼に集めた国々の国内総生産(GDP)を合わせても世界の25%にすぎず、それに対して「日本を含む西欧リベラル陣営は世界のGDPの約50%を占める」規模である。
そして「彼ら反西側と反米の国々」でさえ「機会があれば米国や西側諸国との関係を進めたいと望んでいる。言い換えればいつでも崩れる粗雑な経済圏にすぎない」。さらに世界通貨は相変わらずドルだ。カンボジアですら市場では人民元よりもドルが好まれる。
韓国が「中国経済圏に入る瞬間、ドル中心の西側経済圏から疎外されるかもしれない」と不吉な予想もする。トランプ大統領は中国共産党幹部がハーバード大学で学ぶことを禁じた。同大同窓のネットワークやブランド、学術ソフトパワーから遮断するということだ。韓国が中国を選べば、こうした「付随的なメリット」も失うことになると警告する。
劉氏は「韓国の歴史を見ると、世界的な時代精神と正反対の方向に進んで亡国に至ったケースが多かった」として、李政権に教訓から学ぶことを求めた。しかし劉氏は米国にいるからその景色が見えるが、韓国左派政権にはそれが見えるだろうか。





