トップ国際朝鮮半島ノーベル賞受賞、羨ましがることなのか 創意的基礎研究に長期支援を

ノーベル賞受賞、羨ましがることなのか 創意的基礎研究に長期支援を

ノーベル化学賞の受賞発表から一夜明け、記者会見する北川進・京都大特別教授=9日午前、京都市左京区
ノーベル化学賞の受賞発表から一夜明け、記者会見する北川進・京都大特別教授=9日午前、京都市左京区

 韓国社会は毎年10月になると「ノーベル賞病」になる。今年もそうだった。日本は今年、ノーベル生理学・医学賞に続き化学賞まで受賞し、基礎科学強国の地位を示した。日本がこれまで物理学賞12人、化学賞9人、生理学・医学賞6人など〝ノーベル科学賞〟を27人も輩出する間、韓国はまだ一人もいない。今年は、有力な候補者として取り上げられる韓国人もいなかったという。

 ノーベル科学賞は基礎科学の領域に与える。新しい分野で先駆的な研究を行い、その研究が人類に多大な貢献をしてこそ受けることができる。「ノーベル科学賞受賞者分析」を見れば、最近10年間の受賞者77人は平均37・7歳で核心研究を始め、55・3歳で完成し、69・1歳で受賞したことが分かった。研究開始から受賞までの期間は平均32年だ。今年の日本の受賞者2人も地方国立大(京都大)出身の70代ベテラン教授だ。たゆまぬ基礎研究の結実である。

 日本のノーベル賞の底力は100年を見据えた「無条件投資」から生まれた。1917年に設立された理化学研究所はしっかりとした研究基盤を構築し“ノーベル賞の産室”となった。95年に導入した「科学技術基本法」によって科学技術の振興を国家の責務と見て、莫大(ばくだい)な国費を基礎研究に投資した。2001年の科学技術基本計画の発表時には「今後50年間でノーベル賞受賞者30人を出す」という目標も提示した。研究に集中できる自由な雰囲気、一つのことを深掘りする職人精神と長期的な投資が成功の秘訣(ひけつ)として挙げられる。

 韓国はどうか。米国、欧州、日本など先進国よりはるかに遅く基礎科学投資を始めた。本格的な投資は11年、基礎科学研究院の設立以降だ。基礎科学に対する認識も低く、短期成果にこだわる研究開発(R&D)評価体制も問題だ。10年間の長期課題も5年が過ぎれば技術移転や実用化の要求が多く、大きな成果を出すことは難しい。政策の方向が変われば、研究テーマも流行のように変わる。このような風土で創意的な研究、失敗を容認する文化が定着できるだろうか。

 最も深刻なのは、土台まで崩れつつあることだ。最近、科学人材が皆医学部に集中している。理工系に入学した学生まで医学部に行こうと自主退学するくらいだ。研究職の所得が低く、未来が不安定であるためだ。さらに衝撃的なのは定年退職した国内の碩学(せきがく)たちの中国行きが相次いでいることだ。国家の科学人材管理があまりにも杜撰(ずさん)ではないか。

 化学賞を受賞した京都大の北川進特別教授は、受賞者10人を輩出した同大の学風について「誰もしない基礎的なこと、面白いことをすることが伝統として定着し、その精神が引き継がれてきた」と評価した。研究者が失敗を恐れずに挑戦できる環境を整え、長期的な視点でたゆまず研究を支援することが重要だという話だ。

 人工知能(AI)競争でみるように基礎科学の競争力が国力である時代だ。進むべき方向は明白だ。短期成果中心の研究慣行から脱し、粘り強い研究者を長期的・安定的に支援する基礎科学の生態系をゆくらねばならない。研究者は世の中にないものを掘り起こすべきであり、国家は時間を親のように耐えなければならない。結局、水準の高い研究が続けられてこそ、ノーベル賞は近づいてくるのだ。

(蔡禧昌論説委員、10月14日付)

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