【論壇時評】日米韓協力、国会議長が脅かす 「日本と戦った経験を共有する」?
李在明大統領はようやくトランプ米大統領との会談が決まり、中国からの「戦勝80年記念」式典への招待を蹴ってワシントンに向かった。だがその一方で北京には禹元植国会議長と与党共に民主党の元老・朴智元議員を派遣した。
朴議員が人民大会堂での行事で金正恩北朝鮮国務委員長に「金正恩委員長様、私です」と2度声を掛けて無視されたが、韓国が南北対話を望んでいる意思を伝えることができたと朴氏は帰国後、自画自賛をしている。
「戦勝節」とはもともと「抗日戦勝記念日」のことで、日本に勝利したことを祝う行事だ。だが、そもそも韓国、北朝鮮は「戦勝節」のメンバーだろうかとの議論が韓国では起きている。新東亜(9月号)で盧正泰(ノジョンテ)経済社会研究所専門委員が「李大統領の韓米日協力、禹国会議長が脅かす」の記事を書いている。この中で、韓国が日本に勝ったと僭称(せんしょう)するのは、左派歴史観に基づく、歴史の捏造(ねつぞう)であることを指摘している。
戦勝ということでいえば、そもそも中国共産党政府自体が「日本に勝った」わけではない。中華人民共和国は1949年に成立しており、日本に勝ったと言えるのは当時の国民党政府だ。記事ではそのことを指摘した上で、中国と韓国、北朝鮮が「共に日本と戦った経験を共有する」のはおかしいと主張している。至極まっとうだ。
ところが韓国の左派史観では韓国は日本と戦ったことになっている。だから韓国は戦勝国の一員となる。だが、史実は違う。当時の朝鮮は日本と交戦していない。左派の主張の根拠は“臨時政府”にある。1919年に上海で亡命朝鮮人によって宣言されたが、当時の国際社会でこれを認める国は一つもなかった。朝鮮は日本の一部だった。従って“臨時政府”と日本が「交戦」した事実もない。だから、日本の敗戦時に韓国、北朝鮮が戦勝国として呼ばれることはなかったのである。
ところが韓国憲法前文では「臨時政府の法統を継承し」とある。これは実体的に臨時政府を継承しているということではなく、その精神を継いでいるということだ。しかし、左派史観では実体の政府であると解釈する。そうすることによって韓国は戦勝国となり、統治時代の一切を「不法行為」として賠償を請求できる根拠とするわけだ。
李大統領がトランプ米大統領の前で「安米経中(安保は米国、経済は中国)を廃止する」と約束し、日米韓協力を確かめてきたのに、その足元では相変わらず歴史をさかのぼって、日米韓の連帯を乱す与党がいる。日本が李在明政府を完全に信用できない理由である。





