【ポイント解説】没になった北京入りナマ写真
記者をしていると「なんでこんな仕事をしているのか」と思うことがある。張り込みして苦労して取った情報や写真が没になった時の徒労感だ。紙面には掲載されなかったが、金正恩の北京入り現場を自分の目で見て、写真まで撮って、厳しい統制国家でまんまと送信までできたことは、ささやかな満足感を記者に与えた。
紙面にはよりよい写真を載せるのは当然のことだ。自社原稿、自社写真優先とは身内贔屓(ひいき)にすぎず、購読者のことを考えていない。金正恩の訪中で一番いい写真を撮れるのは随行カメラであることは間違いない。最初から勝負にならないのである。
しかし、北京特派員はその徒労に終わった1日の張り込み取材をスケッチ記事にして、無駄にはしなかった。それに金正恩の写真には希少価値がある。いつか日の目を見ることがあるかもしれない。
ここで少し疑問がある。中国の公安は韓国記者の微信だけをチェックして、韓国人が主に使うカカオトークは見なかったのだろうかということだ。微信もカカオも日本のLINEに相当するアプリだ。
顔写真から、駐在している家族の写真まで検索できてしまう中国の顔認証システムも恐ろしい。素性は「全部知っている」という脅しだ。
金正恩の訪中は中国にとっても外交力を示すことで、公安のチェックが緩かったのは、それを反映してのことだったのかもしれない。(敬称略)(岩崎 哲)





