
歴代大統領の中で最も劇的な外交リーダーシップの変化を見せたのは盧武鉉元大統領だ。政権初期、自主派と同盟派の対立で尹永寛外交部長官(外相)を更迭した政府が支持層の反対にもかかわらず韓米自由貿易協定(FTA)を締結し、イラク派兵、済州海軍基地の建設を推進。尹氏はこれを「学習効果」と表現した。国家指導者は誰でも現実外交を経験しながら政策の変化を経るしかないとの話だ。
訪米中の李在明大統領の外交はひとまず肯定的だ。日本を先に訪ね、石破茂首相と未来の協力を強化する共同発表文を出したことに対し、「最初のボタンをうまくかけた」という評価だ。過去の歴史や福島汚染処理水放流論議で“反日”発言を浴びせた「政治家李在明」とは雰囲気が違った。慰安婦合意の破棄と日本の対韓輸出統制など、悪化の一途をたどった文在寅政権とは違った出発だ。李大統領が標榜(ひょうぼう)した「国益中心の実用外交」の一環とみえる。
トランプ発の関税暴風、弱肉強食のジャングルに変わった強大国の政治秩序の中で国益を守るためには、確実な友軍づくりから始めるのが筋だ。現実の外交より理念を先立てた前の進歩政権の試行錯誤を避けるための学習効果かもしれない。
だが、対北朝鮮政策だけは歴代進歩政権の「リレー」を見る感じだ。李在明政権は北朝鮮へのビラ散布を阻止し、50年間続けてきた北朝鮮住民向けの対北放送を打ち切った。北側の違反で無力化された9・19軍事合意も先駆けて段階的に復元すると述べた。こうした融和的措置を「空(むな)しい犬の夢」と貶(おとし)めた金与正(朝鮮労働党副部長)発言は努めて無視した。
北朝鮮の核・ミサイル技術の高度化とウクライナ参戦を通した朝露密着で韓半島状況はさらに悪化した。北朝鮮の核問題の解決策を見いだせない限り、南北関係の改善は望み薄だ。
李大統領は米日歴訪に先立ち、核・ミサイルの「凍結、縮小、非核化」という3段階の北核解決策に言及した。北朝鮮が終局的に核廃棄の交渉テーブルに着くかは疑問だが、着いたとしても数年前よりはるかに高い掛け金を要求するはずだ。
イベントが好きなトランプ大統領が“凍結”の果実だけを取って、韓米合同軍事演習・在韓米軍の縮小、戦時作戦統制権の移管など、安保の負担は韓国が背負うことになるのではないかと、早くも心配だ。
北朝鮮の金正恩総書記はトランプ氏やプーチン露大統領を通じて「事実上の核保有国」と認められる「後見国の政治的承認経路」を踏む公算が大きい。トランプ氏と韓国進歩政権の再登場を核保有国にビルドアップする時間・空間として活用するだろう。
足元に火が付いた通商大乱を収拾することも重要だが、北核問題は大韓民国の未来、生存が懸かった問題だ。「核がある北朝鮮」を相手にする時、李大統領の国益中心外交・安保リーダーシップが最もよく発揮されなければならない。
(黄政美主筆、8月26日付)






