
李在明政権は国益中心の「実用外交」を標榜(ひょうぼう)している。尹錫悦前政権のいわゆる「価値外交」という名の下、米国との密着に専念して、中国、ロシアなどとは疎遠になったことを正そうという意図と解釈される。中国の喜ぶ顔がありありと見える。
さっそく9月3日の「抗日戦争勝利記念日」(戦勝節)80周年記念行事に李大統領を招待した。ちょうど10年前の戦勝節70周年に朴槿恵大統領が参加した前例を念頭に置いたものだろう。
当時、国内では心配と反対の声が大きかったが、朴大統領は中国訪問を強行した。北京天安門の望楼に上がって習近平国家主席など各国首脳と並んで中国人民解放軍の大規模閲兵式を見守りながら手をたたいた。
韓国動乱の際、中国共産軍の介入を記憶する韓国人としては、唖然(あぜん)とせざるを得ない。より不都合なのは、朴大統領のすぐ左側にいたプーチン露大統領の存在だった。
2014年3月、ロシアがウクライナの領土のクリミア半島を強奪して1年6カ月ほど経(た)った時期だった。自由陣営の国家がすべてプーチン氏を侵略者と規定し糾弾する時、他ならぬ韓国の指導者は彼のそばを守る格好になった。同盟の米国が強い憂慮を示し、韓米関係が冷え切ったのは当然の結果であった。
共に民主党の代表選候補である鄭清来、朴賛大の両議員が今月16日、TV討論会を開催した。李大統領が中国の戦勝節記念式に参加すべきかを尋ねる質問に、2人とも「参加すべきだ」と答えた。鄭議員は「中国と関係を復元しようとするなら行くべきだ」として、「政治は米国、経済は中国、均衡外交を展開すべきだ」と根拠を挙げた。朴議員も「中国と対立する理由はない」とし、「国力を信じて、度胸をもって外交しなければならない」と主張した。
与党の代表候補者の露骨な親中発言に戸惑いを禁じ得ない。鄭議員は、トランプ2期政権になって米国が「安保は米国と、経済は中国とおのおの協力すればいい」といういわゆる「安米経中」路線を追求するアジア同盟諸国に警告状を発した事実を知らないのか。朴議員が私たちの国力をどれほど正確に把握しているのかも疑問だが、国の存亡が懸かった外交・安保事案において「度胸」云々(うんぬん)する無謀さにはため息をつくしかない。
李大統領が中国の戦勝節に参加しない方向だとの報道が相次いでいるが、当の大統領室で明確な方針を出したことはない。新任の趙顕外交部長官(外相)は候補者だった時に、国会の人事聴聞会でこの問題に対し、「確定的に答えにくい」と述べた。中国との関係を考慮しなければならない政府の立場を勘案しても、健全な韓米同盟のために早い決断が求められる。
与党の代表候補は李在明政権発足後、韓米関係で異常気流が感知される現実を直視してほしい。経済的利益だけ追う親中行動は韓国の外交・安保にブーメランとなって返ってくるだろう。
(金泰勲論説委員、7月24日付)





