トップ国際朝鮮半島壊滅危機に瀕した韓国保守 原因は思想と理念の不在

壊滅危機に瀕した韓国保守 原因は思想と理念の不在

2030世代に可能性を模索

韓国の保守が「壊滅の危機」に瀕(ひん)しているという。左派政権の誕生でこれから「保守の大虐殺が始まる」という表現もメディアで見掛けるほどだ。韓国保守はどうなっているのだろうか。

月刊朝鮮(7月号)がその保守の「自省と未来」を特集した。同誌は「大統領選の敗北は単純な政権喪失ではない。政治勢力としての保守の存立自体を揺さぶっている」とし、「“敗北の惰性”に陥っている」とまで言う。要するに“負け癖”がついているということだ。

なぜそんな状況に陥ってしまったのだろうか。一言で「思想と理念の不在」を挙げた。韓国経済新聞の主筆を務め、現在はネットメディア主宰の鄭奎載(チョンギュジェ)氏は「(保守野党の)国民の力は保守的価値がない、ただの地域政党、慶尚道政党になり下がった」と言う。確かに、かつては朴正熙大統領はじめ政界の保守本流を輩出したのは慶尚道だった。その上に胡坐(あぐら)をかいていたことで、肝心の理念や政策を打ち出すことが疎(おろそ)かになり、いつの間にか「慶尚道」という地盤だけで保守を名乗っていた、という指摘だ。

朴槿恵大統領の代理人団に属した黄盛郁(ファンソンウク)弁護士は「国民の力の頭の中には保守主義・自由主義がなくて、経済成長の経験だけあって、ただよく食べよく暮らせば、それが保守という考えだけだ」と思想、理念の不在を批判する。

さらに「政治闘争は結局、価値の戦い」であるとし、左派の共に民主党は「80年代運動圏で一緒に戦った経験がある」ために、そこで形成されてきた価値がしっかりとしていると指摘した。

この闘争の経験と価値は保守に決定的に不足する部分だ。最近の保守は大統領選となると生え抜き、たたき上げの候補者を擁立するのではなく、政治経験もない外部人材を“輸血”してきて選挙に臨むか、政治経験を積ませるといっても短期間議員を経験させる程度の“促成栽培”で担ぎ出すことが多くなった。かつての李会昌氏は最高裁判事出身、李明博氏は財界人、尹錫悦氏は検察総長、といった具合である。

大統領選のたびに過去の経験を活(い)かすわけでもない陣営が組まれるのであれば、選挙に勝つのは難しくなる。

こうした保守の危機は裏を返せば左派の周到な体制掌握の歩みがあったということだ。左派の主力はいわゆる「86世代」と呼ばれる1980年代の民主化運動を牽引(けんいん)し、いま社会の各界各層で主流を形成している世代である。日本で言えば「団塊の世代」であり、大学自治や安保反対を叫んだ学生運動世代に近い。

それまでの軍事政権への反発、自由を希求する人間の本性、経済発展と生活の余裕、こうした状況の中で、北朝鮮の対南思想工作が噛(か)み合わさって、80年代の大学を中心とした思想状況は「左派」「進歩」に大きく傾いていった。

この世代を真ん中で引っ張っていったのが「運動圏」と呼ばれる各大学の自治会などを掌握した学生活動家であり、その中心には北朝鮮の思想的影響を受けた「主体思想派」(主思派)、さらに核心部分には北朝鮮で訓練を受けてきた工作員がいた。

彼らは労働運動や教育界、司法界、官界、政界など、社会の各界各層に浸透していって、今日の韓国の主流を形成したのである。これでは保守が勝てるわけがない。

保守の立て直しは可能なのか。同誌は韓国で言う「2030世代」の動向に注目している。20代30代の「MZ世代」とも呼ばれる若者である。彼らは共産主義の失敗や全体主義の欠陥も理解している。労組から脱退するMZ組合員も多いという。左派も結局「既得権勢力」であることも分かっている。

作家の周大煥(チュデファン)氏は「今は既得権勢力に反感を持った2030世代と共に新しい政治的可能性を模索できる時期」だと主張する。反日・従北・親中といった「国家の生存と関係がない非現実的主張にも納得できない」層であるという。彼らの声を汲(く)み上げる政治勢力が保守なのかどうか、まだ「自省」の過程はそこまでいっていないようである。(韓国編 岩崎 哲)

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