
滞りなき国政遂行に最善を
最近のフランス政界を見ると、大統領選以前の韓国が想起される。仏裁判所は今年3月、公金横領容疑を受ける極右政党「国民連合」のマリーヌ・ルペン前党首に対し、1審で懲役4年を宣告し、5年間の被選挙権剥奪も命令した。この刑量が上級審で確定すれば、ルペン氏は2027年大統領選挙への出馬が禁止される。
彼女は17年と22年の2度、大統領選の決選投票でマクロン大統領と競い、連続して2位となった。22年大統領選では得票率が41%を超え、各種世論調査でもルペン氏の支持率は相変わらず30%台後半をキープしている。
当初、1審判決に従わず「必ず大統領選に挑戦する」と誓ったルペン氏も、最近のメディアのインタビューで、「(司法リスクのため)大統領選出馬が不可能になり得るということを受け入れる」と述べている。
水原地裁が1日、京畿道知事の時代に法人カードを流用した容疑で起訴された李在明大統領の1審裁判の中断を発表した。裁判所は「大統領として憲法上の職務である国政運営の継続性を保障するため」だと理由を明らかにした。「大統領は内乱または外患の罪を犯した場合を除いては在職中刑事上の訴追を受けない」とする憲法84条に基づく判断と解釈される。
これで李大統領を被告人とする刑事裁判5件のうち4件が中断した。最後に残ったサンバンウル対北朝鮮送金事件の裁判もまもなく同じ手順を踏むだろう。
野党は「5年後、任期が終われば誠実に裁判を受けることを約束せよ」という新しい要求を出している。これはもっともらしく聞こえるが、果たして私たちの国益に役立つかは疑問だ。大統領は国家と国民を代表して世界の首脳と会って意見を交わし、協力方策を模索する。韓国の大統領と向き合った相手が「まもなく裁判所で裁判を受ける人」だという先入観を持っていれば、果たして強い交渉力を発揮できるだろうか。そのような約束が強いて必要なら、任期末にしても差し支えないだろう。
法治主義国家である韓国で、大統領だからといって法の上にいることはできない。李大統領が2030年6月に退任すれば、それまで中断された司法手続きの再開は自明だ。裁判結果に従って、李大統領は濡(ぬ)れ衣(ぎぬ)を晴らすことも、有罪が確定することもあり得る。もちろん国民の中に「不幸な前職大統領」のリストにもう1人追加されることを願う者はいないだろう。
李大統領は裁判中断が「国政運営の継続性を保障するため」という裁判所の決定理由を深く肝に銘じてほしい。5年間封印された司法リスクから解放される瞬間まで、滞りなき国政遂行に最善を尽くすことを期待する。
(金泰勲(キムテフン)論説委員、7月3日付)





