
民間交流日常化、産業協力も共同体レベル
2022年、日本での生活を始めた頃、地下鉄でスマートフォンで韓国の時代劇を視聴している日本人乗客を見て大変驚いたことがある。“日本の韓流”の話は前からよく聞いていたが、日本の現地で目の前に広がる見慣れない風景は今でも特別な記憶として残っている。
翌春、鎌倉を訪ねた。韓国人観光客があふれていた。日本アニメ映画「スラムダンク」が大人気で、舞台となった鎌倉高校前駅を訪ねる人々が増えたことも一役買ったようだ。実際にその頃、日本の有名な観光地はどこに行っても韓国人だらけだった。
1965年6月、韓国と日本が正式に国交を回復して60年が過ぎた現在の両国関係を示す象徴的な場面である。韓日関係はさまざまな様相を呈し、その中には否定的なことも少なくないが、国民がお互いを大きな拒否感もなく接して楽しむというのが核心だ。1200万人、昨年両国を往来した人の数だ。民間交流は日常化に達した。
経済的な密着も「共同体」という言葉が顔負けしないほどだ。韓国貿易協会が最近発表した報告書によれば、韓日産業協力は単純な輸出入を越えて実質的なサプライチェーン(供給網)共同体レベルに転換されている。半導体、2次電池、ディスプレー、鉄鋼、エネルギー、電子部品など、先端製造業を中心に精密な技術協業を結んでいる。
問題はやはり政治だ。過去の歴史と絡むと互いの自尊心、アイデンティティーと関連して際限なく複雑になる。外交でそうでないことがあるかとも思うが、特に政権に就いた勢力がアプローチする態度が重要だ。前提にすべきことは、両国政府が政治的対決モードになったとしても、浮き沈みはあっても経済、文化を中心に密着した流れに逆らうことは難しいという点だ。文在寅・安倍晋三政権当時、政府間の対立は国交正常化後、最悪と言われるほど深刻だったが、多くの韓国人が日本を訪問して観光を楽しみ、日本は当時でも韓流世界化の拠点だった。
李在明大統領の対日政策はどうだろうか。日本の関心は大きい。李大統領が野党の頃、日本に敵対的な発言をしたといって緊張する様子だ。露骨なほどの求愛で一貫した尹錫悦前大統領を3年近く経験してきたので、代わった相手に対する関心はいっそう強いはずだ。
カナダで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)に招待された李大統領は6月17日、石破茂首相と初の(対面での)首脳会談を行い、韓日が「前庭を共に使用する隣人のようだ」と述べた。単純に地理的な近接性を言うのでなく、これまで築いてきた両国関係に対する総評であろう。
前庭を共用する隣同士は近くて対立も多い。対立を減らしながら共用する前庭を広めていくことが重要だ。李大統領が基礎を固めなければならない韓国、日本の新しい60年がより充実することを期待する。
(姜具烈国際部長、6月25日付)