
節制のある権力行使を
昨年7月、親李在明系の座長と呼ばれる共に民主党(以下、民主党)の鄭成湖議員をインタビューした。鄭氏はずっと国会の絶対多数議席を占めた民主党の「謙遜」を強調した。最も記憶に残る言葉は取材を終えた後の鄭議員の独り言だった。つぶやくように「李前代表の周辺に奸臣が増えて心配だ」と言った。少数与党を相手に強硬一辺倒を貫く強硬派側近グループについての話と聞こえた。
大統領が就任宣誓の後、初めての執務として与野党代表と昼食を共にしたのは過去には見られなかった光景だ。李大統領は「改革新党の千ハラム、国民の力の金龍泰代表、よろしくお願いする。しばしば会おう」と語り、「譲歩することは譲歩し、妥協することは妥協する」と述べた。李大統領の今後の国政運営に大きな期待を持たせる場面だ。
しかし、国会に目を向ければ相変わらず多数議席を前面に出したごり押しが続く。民主党は国会本会議で3大特検法案(内乱・金建希・蔡上等兵特検)と検事懲戒法改正案を野党の反発の中で強行処理した。法制司法委小委では大法院(最高裁)判事の定員を14人から30人に増やす法院組織法改正案を与党単独で議決した。新政権の発足直後であるだけに、対立を招く力の行事は節制しようという「苦言」は強硬論で埋もれてしまったようだ。
李在明政権は1987年以後、最も強力な政権と評価される。立法権と行政権を全部握った。李大統領は大統領選で過半得票には失敗したが、歴代最多得票も記録した。しかし、李大統領を支持しない国民が半分に肉迫した点を重く受け止めなければならない。必要な政策は速やかに推進すべきだが、強硬な支持者に振り回されて独善に走ってはならないという話だ。
李大統領が掲げた時代精神は「内乱終息」だった。内乱勢力の断罪を強調しながらも、特定人を狙った政治報復はしないと約束した。同時に「統合と縫合は違う」として、戒厳に対する徹底した断罪を約束した。内乱勢力に対する捜査と処罰は避けられない。
しかし、積弊清算を名分に過去にだけ拘泥し、未来に備える時間を浪費してはならない。内乱終息はメスで患部をえぐり取る形で、最小時間で最小範囲に限定するのが望ましい。政治報復と解釈される口実を与えれば国政運営の負担になることを肝に銘じるよう願う。
李大統領は艱難(かんなん)辛苦を勝ち抜いて不可能であるような目標を達成してきた。しかも先の総選挙圧勝と代表再任で与党内の一極体制を構築した。こういう指導者には異見を言いにくい。それでより必要なのが、レッドチーム(組織内の確証偏向を防ぐために義務的に反対意見を出す参謀)だ。
これまでの政権の失敗は、直言する参謀がいなかったという点を忘れてはならない。反対側の立場に立って耳障りな話をする参謀を側に置かなければならない。レッドチームの成否はひとえに大統領の意志に懸かっている。これまで行われた李政権の人選を見ると、付き合いのある人物、気楽な人物を中心に重用しているようで残念だ。
(パク・チャンオク論説室長、6月10日付)