トップ国際朝鮮半島李在明氏の韓国大統領選勝利と今後の日韓関係

李在明氏の韓国大統領選勝利と今後の日韓関係

6月3日に行われた韓国大統領選挙において、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)候補が与党「国民の力」のキム・ムンス(金文洙)候補を破り、新大統領に当選した。この選挙は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の弾劾・罷免に伴う繰り上げ選挙として注目を集めた。李氏の勝利は、韓国政治における革新派の復権を象徴する出来事であるが、同時に彼の過去の「反日」的な発言や姿勢が、今後の日韓関係にどのような影響を及ぼすのか。ここでは、李氏の政治的背景と、韓国国内の世論および安全保障環境を踏まえ、日韓関係の展望を考察する。

韓国ソウルの汝矣島公園で行われた選挙前夜の最後の集会で、支持者たちの前で親指を立ててて応える共に民主党の大統領候補の李在明氏(2025年6月2日/UPI)

●李在明氏の政治的背景と「反日」姿勢

李氏は、京畿道知事や城南市長としての実績を背景に、庶民層や進歩派から強い支持を得てきた。労働者階級出身の彼は、経済格差是正や社会正義を掲げ、若年層や中低所得層に訴求する政策を展開してきた。一方で、過去には日本に対する強硬な発言が目立った。例えば、2018年の独島(日本名:竹島)訪問や、歴史問題を巡る日本批判は、彼の「反日」イメージを形成した。これらの言動は、韓国国内のナショナリズムを背景に一定の支持を集めたが、過激な反日姿勢は国内外で賛否を呼んでいる。

しかし、李氏の最近の発言からは、日本との関係改善に向けた現実的なアプローチも垣間見える。選挙戦では、民間交流や経済協力を通じた日韓関係の強化を主張し、過度な対立を避ける姿勢を示唆した。これは、彼が大統領として直面する複雑な国内・国際環境を意識した戦略とみられる。

●韓国国内の世論:過剰な反日への抵抗

韓国国内の世論、特に若年層や中道派の動向は、日韓関係の今後を考える上で重要な要素である。近年、韓国の若年層は経済不況や就職難に直面しており、反日感情よりも現実的な経済成長や雇用の安定を求める声が強まっている。

Xの投稿でも、「反日より経済優先」「日本との協力が必要」との意見が散見され、過剰な反日姿勢への疲弊感が広がっている。若い世代ほど良好な日韓関係を支持しており、歴史問題を巡る対立よりも、経済や文化交流の強化を望む傾向が顕著である。

中道派の国民も同様に、実利的な外交を求める声が強い。尹錫悦政権下での日韓関係改善の取り組み、例えば2023年の「徴用工問題」解決策や日米韓三カ国協力の強化は、一定の評価を受けた。これに対し、李氏が過去のような強硬姿勢を維持すれば、国内の支持基盤である中道層の離反を招くリスクがある。したがって、李氏は選挙戦での現実的な発言を反映し、バランスの取れた外交を展開せざるを得ない。

●安全保障環境と日本の役割

韓国を取り巻く安全保障環境は、日韓関係の安定を一層重要にしている。北朝鮮の核・ミサイル開発の進展や、中国の地域覇権の拡大、ロシアの地政学的動向は、韓国にとっても深刻な課題である。こうした中、米国を基軸とする日米韓三カ国協力は、韓国の安全保障戦略の要である。2023年のキャンプ・デービッドでの日米韓首脳会談以降、三カ国は共同軍事演習や情報共有を強化してきた。李氏がこの枠組みを維持・強化する方針を採る場合、日本との安定的な関係構築は不可欠である。

日本は、韓国にとって経済面でも重要なパートナーである。韓国にとって日本は中国、米国に次ぐ第3位の貿易相手国であり、半導体や自動車産業におけるサプライチェーンの連携は深い。李氏が公約で掲げた経済再建や雇用創出を実現するには、日本との経済協力を無視することは難しい。また、観光や文化交流の面でも、2024年に日本を訪れた韓国人観光客は約700万人に上り、両国民の草の根レベルの交流は拡大している。

●日韓関係の展望

李氏が大統領としてどのような日韓関係を構築するかは、彼の政治的柔軟性にかかっている。過去には反日姿勢を示してきたが、実際に政権を担う際には現実的な判断が求められる。日本としては、尹前政権における良好な日韓関係の継続に最大限努力するだろうが、李氏の対日姿勢によって今後の日韓関係は変わってくることだろう。

(この記事はオンライン版の寄稿であり、必ずしも本紙の論調と同じとは限りません)

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