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未来が失われた次期大統領選挙

最高裁判決で民生基調覆る

2日、ソウルの韓国国会で記者会見する韓悳洙前首相(時事)
2日、ソウルの韓国国会で記者会見する韓悳洙前首相(時事)

こういう大統領選挙はなかった。就任3年にもならない大統領が突然の戒厳宣言で罷免され、早期大統領選が確定した時、「秩序正しい選挙」局面を期待した。1カ月も残っていない選挙戦は相変わらず混乱している。

世論調査で圧倒的優位を走る共に民主党の李在明(イジェミョン)候補は大法院(最高裁)から有罪趣旨の判決を受けた。国民の力の候補として選ばれた金文洙(キムムンス)前労働部長官や無所属出馬した韓悳洙(ハンドクス)前総理は数カ月前には名簿にもなかった人物だ。有権者が最終的に誰の名前を書くかも分からない。

歴代大統領選の時刻表からすれば、今ごろ候補たちは「時代精神」を論じている時だ。改革、脱権威主義、経済再生、統合、公正・正義といった時代精神が談論を主導し、それを象徴する人物は誰かを巡って争っていただろう。

12・3戒厳事態を受けて、政治家や専門家は帝王的大統領と国会の暴走を制御する改憲、勝者が独占する選挙制度の改編が行われるべきだと主張した。一方、戒厳・弾劾事態と米トランプ政権の関税爆弾で二重三重苦を味わう国民は経済再生が優先だと言う。生活問題である経済は全ての選挙の“定数”だ。

つい最近まで、選挙の様相はそのように流れているようだった。かつて基本所得のような分配公約に重点を置いた李在明氏は「今は成長が時代精神」として、「3・4・5成長」(潜在成長率3%・世界4大輸出国・1人当たり国民所得5万㌦)構想を掲げた。予備選の過程で左右の人士とあまねく接触し、保守陣営元老からは「政治報復でなく統合を」と求められた。李氏の候補受諾演説とマンモス選対委にはこうした助言が反映されたのだろう。

だが、このような基調は今月1日、大法院による李氏の選挙法違反事件高裁差し戻し判決で覆った。李氏の民生重視の言動は、民主党議員らの司法府“口撃”と「李在明救済法」推進に埋もれてしまった。

大法院判決を「司法クーデター」とレッテル貼りした民主党はいつでも曺喜大(チョヒデ)大法院長に対する弾劾訴追案を推進する構えだ。高裁に対しても公判延期を迫っている。選挙前に差し戻し審で有罪が出てくる可能性に備えて、被告が大統領に当選すれば裁判を停止させる刑事訴訟法改正案の処理手続きも踏んでいる。

今回の早期大統領選は初めから「李在明かどうか」の構図だった。それが大法院の判決後、民主党が見せている言動は立法・行政を掌握した李在明政権に対する不安世論を増幅させている。これまで言った通りに実践してきた民主党が司法府まで掌握して三権分立原則を破るのは、時間の問題と見えるためだ。

金文洙・韓悳洙の一本化とビッグテント論(大統領選勝利のため小異を捨て連合して戦おうという主張)が実現するかどうかは見守る必要がある。誰が候補になっても結局、戦闘は「李在明かどうか」戦線で行われるだろう。まだ心を決めていない有権者は「誰がより悪くないか」と悩まなければならない境遇だ。民主主義の祭りという選挙が未来への期待、より良くなるという希望もなく、そのように消費されている。

(黄政美編集人、5月6日付)

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