トップ国際朝鮮半島厚かった司法左傾化の壁 「国家的損失」巡り異論も 韓国大統領罷免

厚かった司法左傾化の壁 「国家的損失」巡り異論も 韓国大統領罷免

韓国の尹錫悦大統領=3月8日、京畿道義王市(EPA時事)
韓国の尹錫悦大統領=3月8日、京畿道義王市(EPA時事)

国論を二分させた尹錫悦大統領の弾劾裁判が、憲法裁判所による弾劾認容の決定により決着し、尹氏は罷免された。昨年12月の尹氏による突然の「非常戒厳」宣言という、到底国民が受け入れられない特大級の墓穴が引き金となり、当初から尹氏弾劾のチャンスを虎視眈々と狙っていた国内革新勢力の扇動に多くの国民が影響され、最終的に左傾化が著しいと言われる司法の壁にぶつかった結果だと言える。

今回の弾劾裁判はある意味予想通りだった。尹氏の弁護人団が決定後に「法理的に納得できない政治的判決」と指摘したように、憲法裁は最初から手続きや法解釈などの面で偏向的だと批判され、審理は「結論ありき」の印象を与えていた。

文炯培所長権限代行は宣告要旨を読み上げ、戒厳令に至った動機をはじめ尹氏側の主張をことごとく否定し、尹氏に対する個人的感情でもあるかのように一顧だにしなかった。判事8人が全員一致で弾劾認容の決定を下したというが、最終弁論から1カ月以上も宣告日を決められなかったのは、棄却か却下を主張していた保守・中道保守系と言われる判事3人の説得に時間を要したためとの見方もある。

文代行は尹氏罷免の判断基準について「罷免することで得られる憲法守護の利益が罷免に伴う国家的損失を圧倒するほど大きい」と言及したが、これには異論も出そうだ。社会左傾化が進行した韓国に自由民主主義的な秩序を回復させようとした尹氏の努力や北朝鮮、中国、ロシアなどの安全保障上の脅威への対抗軸として日米韓3カ国の連携を大幅に強化させた尹氏の功績が、罷免により中断あるいは逆行する恐れがあるからだ。

韓国現職大統領が弾劾裁判で罷免されるのは2017年の朴槿恵大統領に次いで2人目。いずれも保守系の大統領であるのは単なる偶然だろうか。

尹氏罷免を受け、国会訴追人団の鄭清来・共に民主党議員は記者団の前で「大韓民国、万歳!」と叫び、ソウル中心街の弾劾賛成集会では反保守精神を高揚させる「あなたのための行進曲」が高らかに歌われた。60日以内に実施される次期大統領を決める選挙は、皮肉にも数多くの不正疑惑にまみれる李在明氏が最有力視されている。

韓国の行く末が案じられる。(編集委員・上田勇実)

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