トップ国際朝鮮半島朝総連に拉致被害ビラ渡せず 韓国家族会  めぐみさん安否巡り見解差か

朝総連に拉致被害ビラ渡せず 韓国家族会  めぐみさん安否巡り見解差か

日本側制止、強制送還も

韓国の「拉北者家族会」の崔成龍代表

北朝鮮による日本人と韓国人の拉致被害問題の解決に向け、東京の在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部を訪れ、被害者情報や金正恩総書記への批判を盛り込んだビラを総連側に手渡す予定だった拉致被害者家族でつくる社団法人「戦後拉北者被害家族連合会」の崔成龍理事長は29日、都内で世界日報の取材に応じ、日本政府による事実上の制止でビラ手渡しが中止に追い込まれたと明らかにした。

崔氏は28日夜、同連合会の理事や市民団体「自由北韓運動連合」の朴相学代表らと共に韓国から成田国際空港に到着。その場で入管や警察の取り調べを受け、朴氏は過去に受けた懲役刑を理由に同日深夜の韓国行きの便で強制的に送還させられ、崔氏らは総連側がビラを受け取らない場合に飛ばす予定だったドローンを使用しないという誓約書への署名を求められたという。

崔氏は昨年10月ごろに印刷された今回のビラと関連し、「日本側から被害者の一人、横田めぐみさん=拉致当時(13)=の情報を削除するよう要請されたが、すでに10万枚刷り終えた状態だったこともあり応じなかった。今回の強制送還や誓約書強要は、めぐみさんの安否を巡る韓日間の見解の相違も背景にあるのではないか」と語った。

めぐみさんの両親、滋・早紀江さん夫妻は2014年にモンゴル・ウランバートルでめぐみさんの娘ウンギョンさんと面会を果たしたが、めぐみさんの安否を巡り双方に見解の差があったとされる。

また崔氏は「日本は拉致問題の、いうなれば宗主国のような存在。拉致問題は最優先課題と言ってきたはずの日本政府から被害者家族でもある自分たちが弾圧されるのは心外だ。石破政権は対話を進めたいために北朝鮮側を刺激したくないのだろうか」と述べた。

日韓の拉致情報共有に難 韓国拉致家族会理事長 崔成龍氏に聞く

――なぜ旧正月の日に合わせて朝鮮総連にビラを渡そうとしたのか。

 私たちのように拉致被害者の救出活動をする者は、北朝鮮の警備が手薄になる名節などを決行日にすることがよくある。その意味を込めたものだ。

――なぜ朴相学氏だけが強制送還されたのか。

 実は全員強制送還される予定だったが、その時間は飛行機の座席が一つしか残っていなかったようだ。

――朴氏は成田空港で門前払いされた格好だが、事前に到着便を知らせていたのか。

出発2日前、韓国の警察関係者から連絡があり、朴氏の身辺警護が必要なのでフライト情報を提供してほしいと日本の警察当局から言われたと言ってきた。それで教えた。以前にもそういうことがあったので知らせたが、結局は空港で門前払いしたかった日本政府が韓国政府に協力を要請したのだろう。

――しかるべき説明はあったのか。

朴氏だけ別に連れていかれたので、最初は特別保護を受けるのかと思った。ところが、残りのメンバーも途中で入管職員らに別室に呼ばれ、パスポートを回収され、ボディーチェックまで受けた。彼らは韓国語ができない様子で、理由を聞いても説明してくれなかった。その後、朴氏から電話が来て、午後11時すぎに離陸する便で強制追放されると言うではないか。それで合点がいった。日本政府がドローンのことでわれわれを調査しようとしていると。

その後、警察関係者が10人以上来て、韓国語で説明し始め、29日に総連本部前でドローンを使用しないという誓約書に署名するよう求められたので、こんなやり方があるのかと反論した。総連本部前で違法行為がありそうだと判断したら法的措置を取ればいい。あるいは警告するとか。空港で門前払いするとは何事かと反論したが、ドローンは違法なので入国するのだったら誓約書を書くよう言われた。

――誓約書に署名したのか。

 最後まで書かなかった。

――それでも結局、入国した。

午前3時くらいになって高齢のメンバーの一人が疲労で倒れる寸前だった。そこで一刻も早く入国せざるを得なくなり、ビラ渡しそのものを中止することにした。

――総連本部を含む一帯はドローン飛行禁止区域であることは承知の上だったのか。

承知していた。空港での警察当局とのやりとりで、ドローンを飛ばす代わりにビラを投げ入れる方法も浮上した。その話が出たら今度は誓約書を書かなくてもいいと言いだした。ところが朴氏はすでに追放された後だった。

――ドローンを2機持ってきたそうだが。

 現場で警察が阻止しようとした場合、所持してきた2機のうち1機は報道向けデモンストレーションとして簡略に飛ばす姿だけ見せ、もう1機はいずれ北朝鮮に実際に飛ばす飛行機型の手製ドローンで、単に現場で見せるためのものだった。

――総連本部建物へのプロジェクションマッピングも計画していたようだが。

ソウル中心街でのプロジェクションマッピングを見てヒントを得た。だが問題になる可能性もあると聞き、持ってきた100インチのスクリーンに映す予定だった。

――拉致問題解決に向け日韓両国は協力すべきだが、今回のような事態をどう受け止めているか。

 めぐみさんの夫が同じ拉致被害者の金英男氏であることや、めぐみさんの安否に関する情報を巡り、残念ながら日本側が韓国の情報機関や市民団体からもたらされる情報を共有しようとしないことが何度もあった。今回の件でもそういう背景があるのかもしれない。

――英国、スイス、ドイツの北朝鮮大使館で同様にビラ渡しをする計画だと聞いた。

 それは予定通りやるつもりだ。

(聞き手=編集委員・上田勇実)

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