トップ国際朝鮮半島【連載】激動の北東アジア 日韓トンネルの可能性(2)「北朝鮮を救う道」に トランプ米大統領が鍵握る

【連載】激動の北東アジア 日韓トンネルの可能性(2)「北朝鮮を救う道」に トランプ米大統領が鍵握る

都羅山展望台から北朝鮮を見るツアー参加者ら

日韓トンネルの先にある国際ハイウェイ構想を推し進めるに当たり、中国、ロシア、北朝鮮の非民主主義国家が大きな壁として立ちはだかる。北朝鮮を避けては構想は成立しない。

韓国と北朝鮮首脳による南北間対話は2018年以来行われていない。6カ国協議は2008年12月を最後に中断している。こうした中、トランプ米大統領がこの問題にどう関与するのか注目が集まる。大統領就任式後、トランプ氏は在韓米軍基地キャンプ・ハンフリーズの司令とビデオ通話をし、金正恩労働党総書記の様子を尋ねた。

トランプ氏は金氏について「タフな奴(やつ)だ」と話す。23日放送の米FOXニュースとのインタビューでは、金氏と「会うつもりだ」と話した。大統領1期目の18~19年の間に金氏と3度会っており、「良好な関係を築いた」と誇示している。

「韓米両国は北朝鮮の完全な非核化目標に対し、確固たる立場を堅持してきた」(韓国高官)が、トランプ氏は就任直前の20日、記者団を前に北朝鮮を「核保有国」と発言した。歴代米大統領は北朝鮮を核保有国と認めていない。

トランプ前米大統領と金正恩総書記=2019年1月30日、韓国・板門店(UPI)

金氏はトランプ氏との会談が決裂した後、米国への不信感を強めた。韓国では、トランプ氏の一連の発言には賛否両論ある。北朝鮮に対する交渉のシグナルであり、バイデン前政権で硬直した北朝鮮や中国との関係がトランプ氏の在任中に改善されるとの期待が一部にある。

新韓日未来フォーラムの李龍欽(イ・ヨンフム)理事長は、日韓トンネルと国際ハイウェイ構想には、安全保障面でも大きなメリットがあると指摘。「共産圏の国々と民主主義国家を道路で結ぶことで、新たな国家間の協力関係が生まれ、平和な世界を実現する大きな助けとなる」とビジョンを高く評価する。

近年連携を強めるロシアと北朝鮮に対して、自由主義陣営の「韓国・日本・アメリカの軍事的な協力関係を強固なものとするためにも、日韓トンネルは非常に大きな役割を果たすだろう」と考える。

北朝鮮については、「国民の生活を犠牲にしながら核開発を進めるよりも、道路をつなぐことによって経済的な発展を促進した方が豊かな国になることは間違いない」との見方を示す。「北朝鮮を警戒することももちろん重要だが、国民を救う道についても同時に考えなければならない」と語った。

「鉄道を通した場合に通過する北朝鮮にこの構想に賛成してもらうためには、38度線付近の東部に経済特区を設立する」というのが、日韓トンネル構想を支持する有識者の構想だ。特別行政区として繁栄した香港のようなイメージを描く。

北朝鮮と関係が良い中国と、韓国と同盟関係にある米国が特区を共同で管理すれば経済的メリットが発生。経済面や軍事面のメリットを求め兵士をウクライナに送ることをも厭(いと)わない北朝鮮だが、むしろ特区での経済交流の方がメリットは大きいと納得する可能性があるというのだ。

製造業を通じて経済的に豊かになり、線路伝いに経済圏を北部へと拡大させる。その利益が北朝鮮と韓国に入れば、計画に反対する理由はないと分析する。

ただ、約10兆円ともいわれるトンネル建設資金を準備するためには、両国での世論喚起が必要不可欠となる。釜山の建設業の50代男性は、「建設費用を日韓でどのように負担するかを決めることは容易ではないだろう」と話し、着手の難しさを指摘した。李氏は「政治・経済・文化・安保に至るまで、新たな可能性を秘めた日韓トンネルの実現に向けて、今後も活動を続けていく」と意気込んだ。

 (日韓トンネル取材班)

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