トップ国際朝鮮半島国難の中、揺さぶられる「法治主義」【韓国紙】

国難の中、揺さぶられる「法治主義」【韓国紙】

19日、ソウル西部地裁の入り口付近で、尹錫悦大統領の支持者らが乱入し倒された看板(AFP時事)
19日、ソウル西部地裁の入り口付近で、尹錫悦大統領の支持者らが乱入し倒された看板(AFP時事)

乱雑な“司法体系”が露呈

文在寅政権が2020年12月、検察・警察の捜査権の調整と高位公職者犯罪捜査処(公捜処、処は庁に相当)法を強行処理した時、「捜査システムがめちゃくちゃになるだろう」との懸念が大きかった。拙速な立法のせいで法体系が揺らぎ、内容が粗雑だからだ。捜査権をどこに移すかも決めなかった。

共に民主党(以下、民主党)は「検捜完剥」(検察の捜査権の完全剥奪)にだけ血眼になり妥当な批判にも耳を貸さなかった。その結果、内乱罪の捜査権が「意図せず」警察に移り、今のような混乱に陥っている。以前であれば検察が主導する合同捜査本部でいち早く尹錫悦大統領を拘束しただろう。だが、公捜処と警察の特別捜査本部は何度も空振りし、かろうじて尹大統領を拘束・逮捕した。

現職大統領の拘束は「誰も法の上に君臨できない」という憲法精神を再確認させた。だが、尹大統領の弁護団は「法治が死んで法の良心が消えた」と反発した。「12・3非常戒厳宣言は大統領の統治行為であり、一介の検事・判事が判断する問題でない」との主張は一線を越えている。

この渦中で尹大統領の猛烈支持者らが行ったソウル西部地方法院(地裁)での暴動は衝撃的だ。裁判所に乱入して器物破壊、警察官暴行、さらに逮捕令状を発付した判事を探し回ったのは想像もできなかったことだ。法治主義の全面的な否定であり重大な挑戦だ。法治を最も重視する保守の価値にも反することではないのか。

公捜処と裁判所も論議を自ら招来した責任がある。被疑者が大統領なのに手続きをきちんと守らなかった。公捜処が管轄のソウル中央地裁でなく西部地裁に逮捕令状を申請し、「判事ショッピング」論議を招いたのは不適切だった。妥当で顕著な理由がなければ、規定を守るのが正しいが、公捜処は苦しい便法を使った。

その上、進歩性向の西部地裁の令状判事は逮捕令状を発付しながら「刑事訴訟法110条適用排除」という異例な文句を入れて論議を拡大させた。尹大統領側に手続き的、理念的に反発する口実を与えたのは重ね重ね汚点として残るだろう。

今後も問題だ。尹大統領の弾劾審判と民主党の李在明代表の公職選挙法違反2審裁判は国家の命運を決める重大な岐路だ。両裁判とも“火薬庫”に他ならない。裁判で公平性論議、手続き上の欠陥が発生すれば、どんな不祥事が起こるのか見当がつかない。憲法裁判所、裁判所は迅速・公正な裁判を通じて大多数の国民が承服できる結論を出さなければならない。

自由民主主義社会で「支配」という表現が正当化されるのは法の支配だけだ。法の支配が確立されてこそ国民が自ら合意した法によって尊厳と価値が保証される。政治が本来の役割を果たせず国難を招いただけに、今は憲法と法律が提示する道に沿って行くことが唯一の道だ。今、法治を破壊するのは共倒れを招くだけだ。

(蔡禧昌(チェヒチャン)論説委員、1月20日付)

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