トップ国際朝鮮半島尹大統領逮捕、日韓関係に不透明感 くすぶる「反日」李氏のリスク

尹大統領逮捕、日韓関係に不透明感 くすぶる「反日」李氏のリスク

ソウルで演説する韓国野党「共に民主党」の 李在明代表=2024年12月14日(EPA時事)

韓国の尹錫悦大統領が弾劾訴追された上に逮捕され、日韓関係の先行きに不透明感が増している。仮に尹氏が弾劾・罷免となった場合、左派系の最大野党・共に民主党の李在明代表が次期大統領として有力視されるが、李氏には過去の言動から「反日」的なイメージがつきまとい、日本側には再び日韓関係が悪化することへの懸念が広がりそうだ。(ソウル上田勇実)

憲法裁判所で尹氏に対する弾劾裁判が事実上始まり、捜査当局が尹氏の身柄を確保しようとしていた最中の先週、訪韓した岩屋毅外相が共に民主党出身の禹元植・国会議長と面談した。禹氏は岩屋氏に「韓日関係の3本柱」として「経済協力」「北東アジアの平和と安定」「痛ましい歴史」を挙げた。

このうち禹氏は「痛ましい歴史」と関連し、「いかなる関係であれ片方の一方的な譲歩では維持できない。日本政府が前向きな姿勢で歴史問題を直視する時、韓日関係はより安定的かつ未来志向的になるだろう」と述べた。

これは徴用工問題で日本側が韓国大法院判決に沿って賠償金を支払わないまま、尹政権が政府機関による第三者弁済という譲歩をしたことへの不満の表れだ。李氏が尹政権でようやく解決に向かったこの問題を蒸し返す可能性があることを示唆したとも言えよう。

韓国の一部専門家らは、仮に李氏が次期大統領になっても日韓関係が悪化するとは見ていない。「野党時代と政権を取った後では違い、韓日関係の基本路線を百八十度ひっくり返すようなことは難しい」(李元徳・国民大学教授)というわけだ。

確かに李氏は先月の戒厳令後、水嶋光一駐韓大使と会談した際、「日本への深い愛情」を口にした。また日米韓の連携などと関連し、「自由・民主陣営の一員としての役割と責任をより一層果たす」(今月17日)とも述べている。

ただ、こうした発言について大手紙・朝鮮日報は「過去の李氏の発言とは百八十度異なる」とし、「『有力な大統領候補である李在明』の外交・安保に対する同盟国の憂慮を払拭させる努力と解釈される」と指摘した。

李氏は2021年、大韓民国政府の樹立を「親日勢力と米占領軍による合作」と述べ、22年には日米韓の合同演習を「日本軍の朝鮮半島進駐と旭日旗(きょくじつき)が再び朝鮮半島に掲げられる日が実際に来るかもしれない」と語った。一昨年の東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出を巡るデモでは、その先頭に立って「汚染水放出は太平洋沿岸国に対する宣戦布告」と非難した。

もちろん、これらは日本に友好的な尹政権をたたく国内政治用という側面も強いが、それだけではなさそうだ。

李氏は極貧家庭に生まれ、小学校卒業後の少年工時代に上司からのパワハラに苦しんだ。社会への恨みを抱きつつ成長、その矢先に起きたのが軍事独裁政権に反旗を翻した市民による民主化運動と軍部の弾圧、いわゆる光州事件(1980年)だった。

李氏は後に著書「李在明、やると言ったらやる」で「光州(事件)は私にとって救世主、師匠であり、私の社会意識の根っこ。私を変えた」と述べている。

李氏は、反既得権益層を掲げる韓国左派の精神的源である同事件に決定的な影響を受け、人生の目標を設定したとみられている。その後、苦学して大学を卒業し、弁護士、市長、知事、そして最大野党代表にまで上り詰めた。ある元韓国政府高官は李氏を「骨の髄まで左翼革命家」と評する。

結局、李氏が外交辞令でどれだけ日本に融和的な言動をしたとしても、いつその“素顔”を露(あら)わにするか分からない。そんな不安がよぎる。

李氏が従来、抱いてきた親北朝鮮、親中国の政治理念を政策に落とし込んだ場合、尹氏と築いた安保面での日韓協力にも影を落とすことになる。

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