
決定的瞬間に機会を得る
昨年12月、孫正義日本ソフトバンク会長兼最高経営者(CEO)はドナルド・トランプ次期米大統領のフロリダ州の邸宅「マールアラーゴ」での記者会見に同席し、4年間で米国に1000億㌦(約147兆ウォン)を投資して10万人の雇用を創出すると宣言した。
それ以来、孫正義という人が気になっていたが、ワシントンのある日本専門家が話を聞かせてくれた。
1993年11月、36歳の若いベンチャー企業家であった孫会長は毎年、米ラスベガスで開かれたコンピュータ展示会コムデックス(1979~2003年)を訪れた。会場を見回した後、彼は展示会を運営するユダヤ人の億万長者シェルドン・アデルソンを訪ねて「コムデックスを買いたい」と申し出た。「金はあるのか」と聞くアデルソンに彼は「今はないが、近い未来に金を稼ぐ」とし、自分が戻ってくる時まで誰にも売らないでくれと頼んだ。
1年後、彼はアデルソンの前に現れ、値切らないから望む値段を言ってくれといった。アデルソンは半信半疑で8億㌦(当時の為替レートで約1兆ウォン)と言った。孫会長は言い値を支払った。
約20年が過ぎた2016年冬、孫会長はアデルソンから予想もしない電話を受けた。「トランプ次期大統領に会ってみるのはどうか」という電話であった。アデルソンは1995年のコムデックス売却後、約20年間でカジノ財閥に成長した。コムデックスを売った8億㌦が基になったのだ。これを土台に2021年に亡くなるまでトランプ氏に数億㌦の寄付をしながら、彼の親イスラエル政策とアブラハム合意の締結などに影響を及ぼした。そして孫会長をトランプ氏に結び付けてくれたのだ。
この話を聞いて、この関係が金も金だが、思ったより長く複合的な関係なのだという気がした。トランプ氏周辺には数え切れないほどのネットワークづくりの努力があるのだろうが、その中でも成功するネットワーク作りはこういうものだと思った。
同専門家は日本にとっては孫会長の存在が幸運だと言った。在日韓国人(1990年、日本に帰化)と差別された幼少期を過ごした孫会長が成し遂げた逆転劇だ。2月で調整中の日米首脳会談を控えて、石破茂首相が8日、孫会長に会って助言を求めたという。故安倍晋三元首相がいない日本で今は“トランプに通じる道”は名実共に孫会長になった。
日本だけでなく全世界の政府、政界、実業界が「トランプサイド」と連結するために競争している。鄭溶鎭(チョンヨンジン)新世界会長とトランプ氏の15分間の対話が過度に取り上げられるのを見て、これでいいのかという気がした。いつ韓米首脳会談が行われるかも予測できない状況で、誰が就任式に行くのか、就任式と舞踏会の両方に行くのは誰かなどについて消耗的な言及をすることがまた、この時期の重大さを認識できていないように見える。
結局、自身の“本業”で胆力と挑戦意識で成果を出せば、これが新しい機会とつながり、それがより大きいネットワークの種になるのではないかと思う。
(ホン・ジュヒョン・ワシントン特派員、1月13日付)