Home国際朝鮮半島日韓の〝トゲ〟「徴用工」 大きく進展 存命2原告、一転し解決案受容 複数の韓国企業が寄付か

日韓の〝トゲ〟「徴用工」 大きく進展 存命2原告、一転し解決案受容 複数の韓国企業が寄付か

元 徴 用 工 訴 訟 の 原 告 、 李 春 植 さ ん ( 左 ) と 握 手 す る 韓 国 の 朴 振 外 相 ( 当 時 ) 2 0 2 2 年 9 月 2 日 、 南 西 部 ・ 光 州 ( 代 表 撮 影 ・ 時 事
戦前、日本統治下にあった朝鮮半島から日本に渡り、炭鉱や工場などで働いたいわゆる徴用工出身の韓国人に対する賠償問題が解決に向け大きく前進している。韓国大法院(最高裁)で勝訴し、尹錫悦政権が提示した解決案を頑(かたく)なに拒んできた原告のうち存命中の2人が先月相次いで政府案受け入れに転じた。また複数の韓国企業も勝訴した原告への賠償支払いに向け寄付に前向きだという。ようやくこの問題にも決着が近づいているようだ。(ソウル上田勇実)

政府案を受け入れたのは梁錦徳(ヤン・グムドク)さん(94)と李春植(イ・チュンシク)さん(100)。2018年の大法院判決に基づき、原告15人が被告の日本企業に賠償金支払いを求めたが、尹政権発足後、政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が日本企業の事実上の肩代わりとして「第三者弁済」をする解決案が示された。11人はこれを受け入れたが、梁さんと李さん、2遺族の計4原告がこれを拒否してきた。

原告の支援団体は、政府案受け入れはこの問題で日本に謝罪や賠償を求める運動の弱体化につながると考え、国民から寄付金を募り、受け入れ拒否の4原告に昨年1億ウォン(約1090万円)ずつ手渡していた。

ところが、先月23日に梁さんが政府案を受け入れ、賠償金相当額と遅延利子を受領。わずか1週間後の同月30日には李さんも同様に受領した。

支援財団の沈揆先(シム・ギュソン)理事長に近い関係者によると、梁さんも李さんもそれぞれの家族から急に財団に連絡が来て、受け取りを打診。財団側が受け取り意思などを確認した上で、最終的に受領に至ったという。

2人の原告から連絡が来たことについて、沈理事長は「非常に驚いた様子だった」(同関係者)という。受け取りは難しいと判断して裁判所に解決金を供託したため、自ら説得に乗り出すのは法的に問題があり、行き詰まっていたからだ。

また受け取り拒否から態度を一転させたことについて、同関係者は「2人とも高齢なため息子ら家族同士が話し合い、本人が存命中に受け取る方がいいと判断した可能性がある」と述べた。

沈理事長や同財団は、今回2原告が受領したことで「存命中の2原告が受け入れたため、残りの2遺族も間もなく受け入れを決心するのではないかと考えている」(同関係者)という。また1965年の日韓請求権協定で日本からの資金供与の恩恵に預った韓国企業が、財団への寄付に前向きになる契機になるとの見方も示したようだ。

前述の原告15人に対する支払いは、大手鉄鋼メーカのポスコが今年9月に追加で20億ウォン(約2億2000万円)を拠出したことでめどが立ったが、昨年末から今年初めにかけ大法院で勝訴した52人の原告の9割が望む第三者弁済は、財源不足で難しい状況にある。

請求権協定で恩恵を受けた韓国企業は、ポスコのほか韓国土地住宅公社や韓国外換銀行など16社に達するとみられ、「現在、複数企業が寄付に前向き」(同関係者)だという。

当初は、韓国で政権交代がなされた場合、日本企業を肩代わりして賠償金を支払った「親日企業」として指弾されるのを恐れ、寄付を思いとどまっていたとみられていたが、それ以上に社会貢献を重視する公企業や大企業として高齢の原告への支払いを渋ることへの批判をより意識した可能性もありそうだ。

今回、2人が解決案を受け入れたことについて、政府系歴史関連機関のある幹部は「強制動員(徴用工)の被害者に対する法的負債のうち象徴的存在だった2人の問題が終わったため、この問題はほぼ整理されたとみるべきだ。被害者のための運動は別の方法を模索するのではないか」と語った。

李さんの長男が「自分の知らない間に解決案を受け入れた」などと反発し、原告支援団体が運動推進の新たな象徴的人物として担ぎ出す可能性があるなど火種は残るが、日韓関係に深く刺さっていた“トゲ”が抜けようとしているのは確かだ。

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