【ポイント解説】ゴルフ外交はほどほどに
人にもよるがゴルフは普段からやっていなければ腕が落ちる。8年もプレーしていなければ「平均90打」の実力は発揮できるかどうか分からない。
トランプ氏がせっかちなゴルフだとすれば、ミスショットをしてもたもたしていたら足手まといになり、雰囲気も悪くなるだろう。とうていカートに乗って政治や外交の話をする空気ではなくなる。
安倍元首相が当選直後のトランプ氏を訪れ、金ぴかのドライバー(本間ゴルフのベレスS05ドライバー)を贈った話は有名だ。それが行方不明になっているという。大統領が受けた贈り物は国庫に納められるが、就任前に“個人的に”もらったとしてトランプ氏はドライバーを報告していなかったという。2018年に訪日し霞ヶ関カンツリー倶楽部でプレーした際、安倍氏はここでもクラブセットをプレゼントしたが、それも報告せず“行方不明”になっているという話だ。
ともあれ、ゴルフクラブを贈った心は相手に通じた。世界中で評判の悪い「アメリカファースト」の圧力をうまくかわし、「日本も防衛分担を」という要請をテコに安保法制を整え、「インド太平洋戦略」をまとめ上げていけたのも、グリーン上で培った安倍・トランプ関係があったからこそだ。
尹大統領がもしトランプ氏と共にゴルフをすることがあれば、「手の5番(アイアン)、足のウェッジ」には目を瞑(つぶ)り、バンカーではうまく転ぶように練習しておくことをお勧めする。
もっとも、支持率17%にまで落ちた状況でゴルフの練習ラウンドに行っていては、さらに反感を買って数字を落としかねない。慣れないゴルフ外交はやめておいた方がいいようだ。(岩崎 哲)