安保で韓国との協力を重視

日本の与党自民党、石破茂新総裁が102代内閣総理大臣として公式に選出された。
石破内閣の発足は、韓日関係で歴史問題を巡る対立を抑制し、協力を拡大してきた岸田文雄前首相の路線を拡大継承するという点で歓迎すべきことだ。篤実なキリスト教徒である石破氏は靖国神社参拝をしなかった。「慰安婦問題に関して韓国民が納得するまで謝罪しなければならない」と発言するなど、日本の韓半島植民支配と関連した謝罪に前向きな政治家として知られている。彼は2019年7月、安倍晋三内閣が取った対韓国経済制裁に対して、「地域の平和と安定に役立たない」と批判した。
石破氏は防衛庁長官と防衛大臣を歴任し、安保問題に精通した人物だ。中国の海洋進出、北朝鮮の核と弾道ミサイル能力の高度化などに対応するため、韓国との協力を重視する。
ここ数年間、尹錫悦政権と岸田内閣は韓日関係を改善し、バイデン米政権と共に韓・米・日三角協力体制を強化してきた。韓日協力の重要性を熟知している石破氏は3カ国の協力体制を一層発展させていくものと予想される。
また、「米日核共有」に前向きで、「アジア版NATO」の創設を提案したりもした。彼は日本が「主権国家」になるために自衛隊を明記する憲法改正、米日安保条約や日米地位協定の改正を持論として持っている。
ただ、石破氏の安保観が韓日関係や米日関係に当面、否定的な影響を及ぼす可能性は小さい。彼が首相に就任する場合、制度上の制約、アジア諸国の立場、米国の対外戦略など現実の状況を反映して柔軟な立場に調整されるものとみられるためだ。
石破内閣の政権安定性は10月末に行われる衆議院選挙と来年7月の参議院選挙で自民党が勝利できるかどうかに懸かっている。新内閣の発足というコンベンション効果と自民党と公明党の連立維持、経済政策に対する財界の支持、野党の分裂などを勘案すれば、無難に勝利すると予想される。
ただ、中長期的に石破氏が安定した政局運営に成功するかは不透明だ。もし石破内閣が短命政権で終わる場合、自民党で保守右派が再登場する可能性が大きい。
尹錫悦政権の発足後、韓日関係は急速に改善されたが、過去の歴史問題に関連する国民的な不満が相変わらず強く残っている。
25年の韓日国交正常化60周年を目前にした時点で、韓国では石破内閣に対して歴史問題と関連して“太っ腹の決断”を期待する雰囲気がつくられる可能性がある。ところが、石破氏のリーダーシップと政権安定性が不足する状況で、過去の歴史と関連した前向きの措置は、保守右派の反発を呼んで、結果的に韓日関係に不利に作用する可能性がある。
1990年代に日本政府の過去の歴史と関連した一連の謝罪と反省が保守勢力の反発を呼び、21世紀に入ってタカ派的な保守政権の長期執政を招いたことを思い起こす必要がある。性急な期待よりは、長期的で戦略的な観点から歴史の直視と未来の協力のバランスを念頭に置いて、韓日関係の安定した発展のために、知恵を集めていく必要がある。
(曺良鉉〈チョヤンヒョン〉国立外交院教授、10月2日付)