【パリ安倍雅信】欧州連合(EU)の執行機関、欧州委員会の委員を辞任したばかりのフランスのティエリー・ブルトン氏は、仏メディアに対して、ドイツ人のフォンデアライエン委員長が強権リーダーシップを発揮し、ドイツへの利権誘導を行い、フランスの影響力を遠ざけていると警告した。フォンデアライエン氏は2期目の委員長続投が確定し、新しい委員の任命を待つ段階にある。
ブルトン氏は2019年より国内市場、産業政策、デジタル、防衛などを担当する重要委員を務めていた。フォンデアライエン氏とはたびたび意見対立し、2期目の委員任命で、フォンデアライエン氏はマクロン仏大統領に委員交代を要求していた。IT企業のCEOを経験し、フランスでは財務相も務めたブルトン氏は、しばしば、医師出身で元独国防相のフォンデアライエン氏と対立していた。
マクロン氏は、より強力なポストと引き換えにブルトン氏を別の候補者と交換するとして、フランスのステファン・セジュルネ元外相を送り込んだが、結果は、それほど魅力的で強力なポストを与えられなかった。原因の一つは6月の欧州議会選以降、フランス国内政治が混乱し、マクロン氏のEUでの発言権が弱まっていることが挙げられると仏メディアは指摘している。
フランスは現在、財政赤字を巡ってEUと対立しており、予算案提出にさらなる時間を求めなければならない事態に追い込まれている。かつてドイツと並ぶEUの牽引(けんいん)役を自負していたフランスは、国内で右派勢力に追い詰められ、国内で政治基盤が弱体化しており、EUに対しても影響が及んでいる。