自爆型など進化の可能性も
最近、北朝鮮の汚物風船による火災が首都圏各所で頻繁に発生している。放火は新しい挑発パターンだと思えるほどだ。消防当局が火災の原因を調査中に、風船にぶら下がった機械装置を発見した。それでも軍当局は風船から引火性物質が発見されないため、意図的な爆発というよりは装置(発熱タイマー)の誤作動に伴う単純事故と判断した。「落下後に回収」という既存の対応方式も維持するという立場だ。
だが、実際に被害が発生した上に、大型火災に広がる恐れが高まっている。当然、汚物風船の軍事的活用の可能性を指摘せざるを得ない。
北朝鮮は今年5月末から合計17回にわたり汚物風船を飛ばした。風船の数は1600個を上回る。韓国側の対北拡声器と対北ビラへの対応としては、そのレベルが非常に高い。意図がなければ、こうするはずがない。風船の散布を通じて各種データを収集・分析している可能性を排除できない。これをもとに、いざとなれば起爆装置付きの自爆風船やドローンを飛ばすこともあり得る。
韓国内の対立も見過ごすことはできない。巨大野党の共に民主党は、北朝鮮の度重なる汚物風船の挑発に対して「尹錫悦大統領が叫んだ『力による平和』の結果がこれなのか」として、政府を非難している。挑発の主体である北朝鮮に対する批判は抜きにしてだ。
火災による被害を巡っても国家責任の攻防が起こっている。一部では対北ビラを非難して北朝鮮の肩を持つことさえする。ここまでくれば、北朝鮮としては損することのない商売だ。
さらに大きな問題は、政府が「風船に有害物質はない」と規定して国民の警戒心が緩み、汚物風船の散布はいつものことだと印象付けてしまった点だ。汚物風船が新しい挑発であり進化だという本質を、われわれ自ら無視させた格好だ。孫子の兵法「詭計」(人をだまして達成しようとする計略)が現実化する余地は十分ある。
これ以上、汚物風船の散布を軽視して見過ごすことはできない。政府は北朝鮮に厳重に警告すべきだ。すでに国連軍司令部が汚物風船の散布を「深刻な停戦協定違反」と規定しているではないか。
さらに、韓国民間団体の対北ビラ散布を自制するよう誘導する案を考慮しなければならない。さらに大きい被害と混乱を防ぐためだ。武力を動員することは最後のカードだ。とは言っても過度な対応は北朝鮮に挑発の口実を提供する。汚物風船が非武装地帯(DMZ)を越える瞬間、レーザー銃などで空中破壊する方策などを探さなければならない。
ちょうど韓国軍の首脳部が交代した。過去、無人機にソウルまで侵入されたように、北朝鮮の挑発で再び恥をかかせられることがあってはならない。
(パク・ビョンジン論説委員、9月11日)