「親日」狩りに走る韓国左派 閣僚・次官任用で禁止法案

韓国の革新系最大野党「共に民主党」 の李在明代表=8月18日、ソウル(E PA時事)

このところ韓国で日韓関係改善を重視する尹錫悦政権に「親日派」のレッテルを貼り、イメージダウンを図ろうとする左派系野党の動きが相次いでいる。特に最大野党・共に民主党は閣僚や次官などの任用に「親日派」を禁止する特別法案を発議するなどエスカレート気味だ。(ソウル上田勇実)

共に民主党は先月28日、「憲法否定および歴史歪曲(わいきょく)行為者の公職任用禁止などに関する特別法案」を全所属議員170人のうち169人の賛成を得て国会に提出した。

同法案は提出理由について「日帝植民地を正当化した人物が独立記念館長に任命された」が、これを「制裁できる法的根拠がない」ためと説明。今後、「日本帝国主義の侵略と植民地支配の肩を持ったり、親日反民族行為を美化、正当化した者は国および地方自治体、公共機関などに任用、委嘱できないようにする」としている。

尹大統領は先月、日本統治期の朝鮮独立運動に焦点を当てた展示物を集めた独立記念館(忠清南道天安市)の新しい館長を任命したが、左派陣営がこの館長を「日帝植民支配を正当化した」として問題視。任命した尹氏を「親日派」と批判し、自分たちの「反日」歴史観から外れる人に「親日派」の烙印(らくいん)を押して公職から締め出そうと乗り出したのだ。

法案は国務総理傘下に委員会を別途設置し、そこで任用候補者が「親日か否か」を“検閲”してから任用の是非を判断するとしている。まるで独裁国家でしか見られない「表現の自由、学問・思想の自由、職業選択の自由を侵害する反憲法的法案」(韓国保守紙)と言える。

また法案には「歴史歪曲行為」には「独島(日本名・竹島)領有権の歴史的事実と憲法が定める領土規定を否定したり捏造(ねつぞう)(誤記・漏れを含む)し、流布する」ことも盛り込まれている。これは最近、ソウル市内の地下鉄駅構内に設置されてあった「独島」の造形物が、利用客の通行の邪魔になるとの理由から撤去されたことなどを巡り、同党が「尹政権による組織的な独島削除」「独島を譲ろうとするのか」などと噛(か)みついたことと関係しているようだ。

近年、韓国左派にとって「親日」狩りは保守派攻撃の格好の手段となってきたが、同党も今年4月の総選挙で圧勝して以降、尹氏への「親日」批判を強めている。

7月に「佐渡島(さど)の金山」がユネスコ世界文化遺産に登録された際は、そこで働いた朝鮮半島出身者の「強制連行、強制労働の事実」が施設内の展示物に明記されなかったとして、日本政府と交渉した尹政権の姿勢を「親日屈辱外交」と批判した。

先月15日、日本統治からの独立を記念する行事での演説で、尹氏が歴代大統領とは異なり対日批判を封印すると、「日本の歴史洗濯の先頭に立っている」(李在明同党代表)、「大韓民国の大統領なのか朝鮮総督府の総督なのか」(曺国・祖国革新党代表)といった批判が上がった。

「親日」狩りに走る野党を、与党・国民の力は「(東京電力福島第1原子力発電所による処理水の海洋放出を巡る)汚染水騒動の時効が切れ、新たなフェイクをまき散らしている」と強く批判している。

ただ、韓国社会はまだ根拠が曖昧でも「親日」批判がある程度受け入れられてしまう。昨年の「フクシマ汚染水」に世論が踊らされたのを見ても、中身を冷静に精査するより左派の扇動文句に乗せられる傾向が強いのが分かる。そして逆に「親日」を擁護すれば「親日」批判の的にされてしまう。

先日、ある保守系大手紙の記者が、佐渡金山の世界遺産登録で韓国野党が問題視している朝鮮人労働者について、ある識者にコメントを求め、その識者が「強制ではなく募集を見て応募して行った人が多い」と答えたところ、翌朝の新聞には「強制性」を強調したコメントだけが並んだという。

この種の問題で長年、韓国で定説になっている「強制性」を否定するコメントを掲載すれば、自分たちまで「親日」狩りに巻き込まれかねないという防衛本能が働いたとの見方が出ている

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