「京都国際」の校歌に関心持たぬ野球部関係者の本音伝えるウェブ記事

初優勝を果たし、喜ぶ京都国際ナイン=23日、甲子園(時事)
初優勝を果たし、喜ぶ京都国際ナイン=23日、甲子園(時事)

ネット上で論争続く

夏の甲子園で優勝した京都国際高校(京都市)は、生徒数が140人弱しかいない。甲子園の常連校は生徒数1000人を超える私立高校が多い中、よくぞ「深紅の大優勝旗」を手にすることができたものだ。同校野球部生徒と関係者の頑張りに拍手を送りたい。

生徒たちには責任がないことだが、同校の校歌(韓国語)を巡り、ネット上で論争が続いている。X(旧ツイッター)では「甲子園で韓国語の校歌は聴きたくない」などと批判するコメントが多い一方で、「校史を踏まえれば自然」や多様性の観点から問題ないとの内容もある。校歌に対する違和感を述べるならまだしも「韓国の大会に出ろ」などの“嫌韓コメント”も少なくない。

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このため、盛山正仁文部科学相は27日の記者会見で「批判は残念」とコメントしたが、校歌の内容に触れることは避けている。日本政府の見解と異なる固有名詞が入っているからだが、それを理解するには同校の歴史を知る必要がある。

もともとは韓国系の民族教育を行う外国人学校だった同校は2003年、日本の学校教育法が定める「学校」の認可を受け、翌年、日韓両政府が認める学校が開校した。目指すのは「真の国際人」の育成だ。

背景には生徒数の激減と経営難があった。現在は、生徒の8割近くが日本人だという。少子化で生徒募集に苦労する私立高校が甲子園大会で知名度を上げるようとするのは珍しいことではない。

ここから、甲子園で頂点に立つことができた要因が見えてくるが、さらに同校初優勝の秘密を知りたいとネットで調べているといろいろと興味深いことが分かった。

プロ野球選手も輩出

共学の同校は男女ほぼ半数。しかし、野球部員数は61人もいる。決勝を戦った関東第一高校(東京都江戸川区)の89人には及ばないが、どれほど同校が野球部に力を入れ、男子生徒をスカウトしているかが分かる。ちなみに、関東第一は生徒数約2500人のマンモス校だ。

1999年創部の野球部が甲子園初出場を果たしたのは2021年。これまで春夏合わせて5度の甲子園出場を果たし、全国に知られる強豪校となった。これまでプロ野球選手を11人も輩出。プロの道に進みたくて同校入学を希望する球児が少なくないのだから、強くなるわけである。

ただ、韓国語の校歌は初出場時から物議を醸してきた。特に、歌詞の「東海(トンヘ)」と「韓国の学び舎」は論争の的。NHKが流すテロップはそれぞれ「東の海」「韓日の学び舎」に変更されるとともに、「日本語訳は学校から提出されたものです」と注釈が付く。学校側が自主的にそうしたのか、それとも主催者の日本高等学校野球連盟などやNHKに説得されて翻訳を変えたのかは分からない。

特に、固有名詞である「東海」と「東の海」では意味がまったく違うのだから、波紋は大きい。東海とは「日本海」のこと。韓国や北朝鮮は国際社会に、東海に名称変更するか、日本海との併称を要求している。これが優勝校の校歌として甲子園に流れたのだから、韓国政府も国民も大喜びする。一方、盛山文科相はこの校歌を認めるような発言はできない。

監督は思い入れなし

この校歌問題で興味深い記事があった。スポーツ総合雑誌「Sports Graphic Number」の公式サイト「Number Web」に3回にわたって掲載されたコラムで、そこに「監督・選手の本音」が表れている。

野球部関係者は校歌を変えることを学校に掛け合ったことがあったが、実現しなかった。今も校歌への思い入れはないどころか、迷惑に思っているという。意味が分からない生徒もいる。小牧憲継監督は「僕は正直、学校は嫌いなんで。それは書いてもらっていい」とまで語る。なら、京都国際でなくてもいいではないか、という疑問が湧くし、監督が学校を嫌い、生徒が校歌の意味を分からない状況は学校教育として健全でない。同校野球部の生徒たちのこの状況はいつまで続くのだろう。(森田清策)

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