野党は罵倒せず統一案示せ
尹錫悦大統領が第79周年光復節(日本統治からの解放日)慶祝式で発表した「8・15統一ドクトリン」は、自由民主主義体制という統一の志向するところを明確に表明し、意味が大きい。北朝鮮住民の自由熱望を刺激して国際社会の支持を拡大し、北朝鮮が変化するように導くという推進戦略は、前例がないほど攻勢的だ。北朝鮮との体制競争で勝ったという自信を読むことができる。
政府が和解・協力を強調する民族共同体統一案を30年ぶりに補完したことは、南北情勢の変化に合わせた避けられない決断とみる。金正恩総書記は昨年末、南北関係について「同族でない敵対的な二つの国家」と規定した。金日成・金正日先代の遺訓である「統一」を廃棄したことは、対南戦略の大転換だ。それだけ南北間の国力の差と経済・民生政策の失敗に伴う体制不安の脅威を大きく感じているという傍証だ。ドイツ単一民族論を否定し、分断の固定化を試みた旧東ドイツの姿そのものだ。
こういう状況で返事のない対話・協力の話をするのは情勢判断力の不足を露呈するだけだ。人類歴史上、分断国が合意の方式で平和統一をした事例がないという点で、民族共同体統一案は現実性が落ちる理想論に近い。もはや有効でない。
8・15統一ドクトリンに対して、共に民主党は「対話提案でなく戦おうという宣戦布告」と非難した。「結局、吸収統一を主張するもので、一握りの極右勢力糾合用としか見られない」ともいった。北朝鮮の反統一宣言に対しては口を閉ざしながら、新しい統一談論をまず罵倒するというのは正しくない。
しかも、今回の統一ドクトリンは憲法精神にも符合する。憲法4条は「大韓民国は自由民主的な基本秩序に立脚した平和的統一政策を樹立し、推進する」と明示している。それなら民主党の統一方案は何か。自由民主主義統一のほか、どのような統一があり得るのか。合理的な他の方策があるのなら、提示することを望む。
昨年11月に亡命したリ・イルギュ・キューバ駐在北朝鮮参事は「北朝鮮の住民は韓国の国民よりもっと統一を渇望し、熱望している。その理由は生きていけないからだ」と表明した。8・15統一ドクトリンが北朝鮮の住民にとって、苦痛に耐えることができる希望のメッセージになるという期待感を持たせる。
ドイツ統一の主役は東ドイツの住民だった。南北統一も北朝鮮住民の意識が目覚めなければ夢見ることもできない。金正恩政権の偽りの宣伝に騙(だま)されないように分別力を育てなければならない。政府がつくる北朝鮮自由人権ファンドを通じた情報アクセス権の拡大が重要になっている。政界は超党派的に国力を結集し、自由民主主義統一の道に進まなければならない。それが北朝鮮の同胞を生かす道だ。
(金煥基(キムファンギ)論説室長、8月20日付)