【ポイント解説】米国の教訓を他山の石に人
軍事政権時代、政府の力が強い韓国ではメディアは権力の圧力をかわしながら独特の報じ方を身に付けた。他国の事例を紹介しながらその中に自国への批判をほのめかすという方法だ。民主化したとは言っても、今もその手法は変わっていない。
バイデン氏とトランプ氏のTV討論を見て世界中が呆(あき)れた。もっとも笑っているのは中国だろうが、韓国も自国を上回るほどの政治家たちの体たらくを見せ付けられ、自国の政界だけが落伍(らくご)しているわけではないと胸を撫(な)で下ろしたのに違いない。
普段ならば「翻ってわが韓国政界では」と皮肉の一つも吐いて記事を結ぶところだが、老人2人の討論会があまりにもお粗末だったため、自国の政治を並べる気にもならなかったのだろう。
4年前の大統領選騒動以来、「民主主義の旗手」アメリカはどうなってしまったのだろうか。あれ以来米国は本来の姿に戻ることができずにいるし、世界はタガが外れたようにルールを無視した力による現状変更が横行している。これを咎(とが)める声はあるが力はなく。国連にも本気度はうかがわれない。
超大国アメリカがその役割から手を引いたからだ。多くの民主国家は強いアメリカを前提にしているが、いまや頼みにならない。その隙間を中国が埋め、米国や民主世界が果たしていた役割をかすめ取っている。
米メディアは「討論の真の敗者は“米国”であり“米国の有権者”だ」と総括した。松下幸之助は「国民はその程度に応じた政府しかもちえない」と言った。バイデン氏もトランプ氏も米有権者が選んだ人物である。
ここでやはり「翻ってわが国では」との論評があってもよかった。韓国では巨大野党の代表が「重犯罪者」になるかどうかの瀬戸際にある。もしこれを乗り切ってしまえば次期大統領になる可能性が高い。米国の教訓を他山の石とすべきだろう。
(岩崎 哲)