
【ソウル上田勇実】北朝鮮が昨年から朝鮮人民軍の飛行士を中国に派遣し、最新鋭ステルス戦闘機「殲20(J20)」の操縦訓練を極秘に行っていることが分かった。中朝関係筋が17日、本紙に明らかにした。北朝鮮がロシアに続き中国とも軍事面で密接な関係を築いていることを示すものと言える。
同筋によると、人民軍の飛行士は中国で殲20の操縦に関する教習を受け、半島有事などの際に中国から同機を操縦してそのまま出撃することを想定しているという。飛行士の人数や訓練機の数など詳細は不明。
北朝鮮が保有する戦闘機は、旧ソ連が1970年代に開発した「ミグ29」が主力だが、保有数が少ない上に老朽化も進み、代替機の導入が課題となっていた。人民軍が操縦訓練を受けている殲20は中国人民解放軍空軍のために開発された双発ステルス制空戦闘機。戦闘能力が高く、米軍最新鋭機に対抗できると言われる。
中国現地での操縦訓練と即座の出撃態勢は「北朝鮮が実質的に殲20を保有しているのと同じ効果がある」(同筋)。殲20が北朝鮮国内に配備された場合、国連安保理の対北制裁決議に違反するため、中国としては自国内での訓練にとどめ、国際社会の批判をかわす狙いもありそうだ。
中朝関係を巡っては、中国で働く北朝鮮労働者のうち一時帰国した者の再入国を中国が認めないなど、ぎくしゃくするケースも目立っていたが、水面下では軍事協力が進んでいたとみられる。中国としては、ウクライナとの戦争長期化で北朝鮮との軍事協力を強めるロシアを意識し、北朝鮮への影響力を維持したい思惑もありそうだ。