韓国革新系の李在明・共に民主党代表や曺国・祖国革新党代表が被疑者となっている各種裁判が大幅に遅延し、これを訝(いぶか)しがる声が相次いでいる。背景には文在寅前政権時の関連法改正や担当判事たちの資質の問題があるとの指摘が目立つ。判決確定が延び延びになれば、被疑者のまま次期大統領選に出馬する道も開かれる。(ソウル上田勇実)
医師で保守系論客としても知られる徐珉(ソ・ミン)・壇国(タングク)大学教授はこのほど、最大手紙・朝鮮日報への寄稿文「李在明裁判はなぜ限りなく遅れるのか」の中で、市長時代に手掛けた大型宅地開発を巡る巨額の不正利益捻出事件など複数の疑惑で李氏が起訴されながら、裁判が遅々として進まないことに疑問を投げ掛けた。その原因には「文在寅政権時に行われた刑事訴訟法の改正」と「判事たちの使命感のなさ」の二つがあると指摘している。
徐氏は、同法改正により「裁判にかけられた被疑者が『検察で私はそういう陳述をした覚えはない』と言えば、検事が作成した供述調書が裁判の証拠から除外される」ため、検察は「被害者や目撃者などを出廷させ、最初から被告と争わなければならない」と述べた。
実際、李氏の裁判でもこの法律の“改悪”が利用されたという。李氏は市長時代、地元のプロサッカーチームへの後援金133億ウォン(約15億円)を企業4社に促し、その見返りに4社に対し各種認可などの便宜を図った疑いが浮上。特定犯罪加重処罰法上の第三者収賄罪などで起訴された。
しかし、これを立証する市と企業との間の公文や電子メールに関する供述調書を被告が裁判で否認したため、検察は400人以上の市・企業の関係者を証人として出廷させなければならなくなった。このままでは「証人尋問が終わるのに数年、一審判決が下りるのは次期大統領選(2027年)の後、大法院(最高裁)判決までは10年以上かかるかもしれない」(徐氏)という。
また「判事たちの使命感のなさ」について徐氏は「逮捕同意案が国会で可決された李氏を、あらゆる詭弁(きべん)を動員して逮捕させなかった判事」や「起訴後6カ月から1年以内に一審判決を下すべき公職選挙法違反事件の裁判で、1年4カ月も判決を下さず、急に辞任した判事」、さらには「李氏がいろんな口実で出廷しなかったことに対し、口先だけの注意で終わった判事」などを実例として挙げた。
一方、曺氏の場合、子供の大学不正入学に関わった容疑などで一審、二審とも懲役2年の実刑判決を受け、あとは年内にも出されるとみられる大法院の判断を待つだけで、下級審の判断が覆される可能性は低いとみられていた。
ただ、週刊誌・時事ジャーナルは今月掲載の記事で、法理を検討する大法院判事のうち8月に退任する判事の後任人事について「ねじれ国会で優位に立つ野党が牛耳っている」と指摘した。
大法院判事の任命権は尹錫悦大統領にあるが、国会の同意が必要。定員300の国会で「171議席を有する共に民主党が大法院判事の人事を左右できる」(同誌)のが実態だ。
また19年に起訴された曺氏は、3年余りたってようやく一審判決を受けた。その背景について同誌は「事件を審理する判事が、3年勤務後に異動するという原則を破って4年間在籍した後に休職したため、裁判遅延という批判がかなり上がった」と指摘している。
曺氏の有罪が確定して収監されたとしても、2年後には出所する。被選挙権の制約を受けたとしても「次の次」の大統領を目指す道は開かれているわけだ。
近年の韓国社会左傾化と相まって仮に3年後の27年に李在明氏が、さらに5年後の32年に曺国氏がそれぞれ大統領になった場合、韓国は国中を騒がせた被疑者たちにそのまま国政運営の舵(かじ)取りを10年間委ねるという異例の事態を招くことになる。