【ポイント解説】医師不足はまず医師確保から
人ごとではない。地方の医療危機はわが国でも抱える大きな課題である。救急病院をたらい回しにされ、処置が間に合わず命を落とす痛ましいケースは日本の各地でも発生している。
韓国ではこれに加えて、いわゆる“医療大乱”が拍車を掛けている。政府の医大定員拡大方針を巡って医師界が反発し、大学病院の医師や医学部教授らが大量離職している。政府の方針は医師の偏りと地方の医師不足に対応するための措置なのだから、医師側のわがままとしか見えない。
“整形大国”の韓国では医師は高収入が得られる皮膚科・眼科・整形外科の「皮眼整(ピアンソン)」に偏っているという。しかも需要の多い都市部に集中している。地方の勤務医や救急医療・産婦人科・小児科医の成り手が少ない。
そのため政府は地方医大の定員を増やそうとした。だがこれはあまりにも単純な考えだ。地方医大出の医師を増やしたところで彼らが必ずしも地方の医療機関に就くわけではない。一定程度は収入の多い都市部の「皮眼整」に流れるだろう。それに医師が増えれば競争が激化し、患者の取り合いになり、収入は減る。医師たちは反発する。
これだけみれば医師の身勝手だが、反発にはそれなりの言い分がある。人気のない小児科などは診療報酬が少ないのだ。だから政府がまずやるべきは健康保険制度の改革から手を付けろというのが医師側の主張。しかも拡大方針を打ち出したのが総選挙前というのはどういうことか、選挙目当てなのかと言うわけだ。
多分に政治的反発も含まれているが、医師側にも言い分があり、7割の韓国民が政府の方針を支持しているとはいっても、政府のやりようがあまりにも稚拙でマズいことは確か。医療を人質にして政府と医師側が対立したまま、総選挙が行われ、結果は与党の惨敗に終わった。
定員拡大問題だけが争点だったわけではなく、それで与党が負けたわけではないので、拡大方針はそのままだ。しかし、政府が定員を増やすと言っても具体的に大学側が動かなければ実現しない。地方大の医学部では定員拡大方針が教務会議で否決されたというニュースも出てきている。医療脆弱(ぜいじゃく)地の病院問題はまず医師の確保、そのためのインセンティブから始めてはどうなのか。記事ではそのことに言及していないのが残念だ。
(岩崎 哲)






