今回の総選挙惨敗を受け、保守陣営が最も神経を尖(とが)らせるのは、より巨大化した革新系の野党陣営に「数の論理」で国会運営を牛耳られることだが、さらに見過ごせない問題がある。親北反日的な考えを持つ野党候補たちが複数当選したことだ。
最大野党・共に民主党の李在明代表自身、過去に何度も親北反日的な言動をしてきた。選挙運動最終日の9日、ソウル市龍山区で最後の応援遊説をした時も尹錫悦政権の外交政策に触れ、「日本との関係は政府同士では良くなったかもしれないが、国民の生活は悪化した」とし、日韓改善を過小評価。南北関係では「対話努力の不足により朝鮮半島で明日戦争が起きてもおかしくない」と述べた。事実上の北朝鮮擁護だ。
その李代表の下で選挙協力を勝ち取り、地域区1議席と共に民主党の比例政党から出馬し当選した2議席の計3議席を獲得したのが急進親北路線で知られる進歩党系の議員だ。
同党は10年前の旧統合進歩党時代に憲法裁判所から強制解散させられた札付きの党。同党の陰の実力者と呼ばれた李石基議員(当時)は現職国会議員のまま内乱扇動罪で起訴・収監され、物議を醸した。3議員のうち2人は李氏の恩赦・復権運動を行い、残り1人は在韓米軍射撃場の閉鎖を主張した人物だ。
前回の総選挙で議席を失った後、昨年の補欠選挙でようやく1議席を確保したばかりだった同党が、今回、事実上3議席まで増やしたことを巡り、政界では「民主党が進歩党の無血入城を助けたという批判が上がっている」(韓国メディア)という。
また、わずか結党1カ月余りで高い支持率を得て12議席を獲得し、第3党に躍進した祖国革新党の当選者たちの中には、東京電力福島第1原子力発電所の処理水問題で過激な行動をした人物もいる。
今後、そうした過激な議員たちが巨大野党の共に民主党と連帯し、北朝鮮の武力挑発は尹政権の対北強硬政策のせいだと扇動したり、日韓改善路線を「親日的」と非難することも予想される。日米から高く評価される「尹外交」が揺さぶられ、推進力を削(そ)がれるのではないかと懸念する声も聞かれる。
次の焦点は2027年の次期大統領選に移る。特に野党党首たちが抱える「裁判リスク」の行方がカギを握りそうだ。
李氏の場合、市長時代の大型宅地開発を舞台にした巨額収益事件など各種不正疑惑で起訴され、年内に一審判決が出るとも言われる。有罪判決を受けたまま、果たして世論の支持を得て次期大統領候補になれるのか不透明だ。
●氏も子供の不正入試事件ですでに二審で懲役2年の有罪判決を受けたが、近く大法院(最高裁)が判断を下すとみられ、収監される可能性もある。出所しても被選挙権の制約を受ければ、当分の間は大統領候補にはなれない。
与党は総選挙惨敗の責任を取って非常対策委員長を辞任した韓東勲氏の動向に関心が集まるが、何人かの有力議員の名前も挙がっている。与党が次期大統領選まで視野に入れ、保守政党として再起を果たすには、まずは惨敗の最大の責任者とも言われる「尹大統領自身が変わらなければならない」(保守派の論客)。
謙虚さや疎通を重視する姿を国民に見せ、人事では苦言を呈する人物を側近に起用することが不可欠という指摘が多い。
新しい国会は来月30日に始まる。与党から8人の離反者が出れば、野党が政権攻撃用に進める各種疑惑の特別検察官による捜査で大統領は拒否権を行使できなくなる。さらに野党陣営共通の目標とされる大統領弾劾訴追案の国会可決も可能になる。
韓国は大統領が任期途中で罷免されるという悲劇にまた見舞われるのだろうか。保守は瀬戸際に立たされている。(ソウル上田勇実)
●=恵の心を日に