韓国第22代国会議員選挙の投開票日(4月10日)まで1カ月となった。尹錫悦大統領の支持率低迷が続く中、与党「国民の力」が議会過半数を取り戻すのか、それとも多数派の最大野党「共に民主党」が過半数を維持し、ねじれ国会がさらに続くのかが焦点。選挙結果は日韓関係や北東アジア情勢にも少なからぬ影響を及ぼすだけに、関心が集まりそうだ。(ソウル上田勇実)

「昨年末に与党非常対策委員長に就任した韓東勲元法相の個人的キャラクターが功を奏し、与党がじわじわ支持を拡大している。尹大統領に対する不人気までカバーしているのではないか」。総選挙を巡る与党の現状について、政治評論家の厳坰煐・時代精神研究所長はこう語った。

韓氏は舌鋒(ぜっぽう)鋭いことで知られ、検事時代は尹大統領の部下だったが、ややもすると傲慢で権威的に映る検事のイメージとは程遠い。既存の政治家とも異なり「クールでスマートなところが国民には新鮮で好感度が高い」(厳氏)。韓氏は各地の遊説先などで集まった群衆にもみくちゃにされるほどの人気者だ。
公認選びでも縁故や好き嫌いより「一番競争力がある候補を選ぶ傾向が強い」(元大手シンクタンク院長)ため、そうした公平さも評価されているようだ。
与党の支持率は共に民主党と拮抗(きっこう)していたが、「韓東勲効果」で徐々に上昇し始めている。世論調査機関の韓国ギャラップが1日に発表した調査によると、与党の支持率は40%で、共に民主党の33%を7ポイント上回った。
一方、共に民主党は伸び悩んでいる。公認候補選びで李在明代表がもともと党主流派だった文在寅前大統領に近い候補を外し、代わりに自分に個人的に近い人たちを据えようとして、党内に内紛をもたらしたことが影響している。

その象徴的な出来事として話題になったのは、文前政権時に初代大統領秘書室長を務めた任鍾晳氏がソウル市中区・城東区の選挙区からの出馬を準備していたが、最終的に外されたこと。同党の前主流派だった「親文在寅」派と現主流派の「親李在明」派による対立が表面化したとの見方も広がった。
李氏の場合、市長時代の大型宅地開発を舞台にした巨額資金供与疑惑をはじめ幾つもの不正疑惑で起訴されているが、これらの訴訟の弁護士たちを公認選出の選挙に出馬させ、物議を醸している。
与党の韓委員長は「弁護士たちは犯罪嫌疑の内幕を知り尽くしているので、李氏にとって怖い存在。公認は弁護士費用の代納だ」と批判した。一部では「露骨な政党の私物化」「李在明氏の頭には自分が収監されないための方法しかない」など厳しい声も上がった。
今回の総選挙では、国民の力も共に民主党も離党組が新党を結成させ、一時は「第三極」として台風の目になる可能性も取り沙汰された。だが、国民の力を離党した李俊錫元代表の「改革新党」と共に民主党を離党した李洛淵元代表の「新しい未来」は、合流の10日後に主導権争いで分裂。双方とも急速に失速した。
韓国も日本のように地域区(小選挙区)選出と比例代表選出の2通りあるが、前回2020年の選挙同様、比例にだけ候補者を擁立し、選挙後に二大政党に合流する「衛星政党」と呼ばれる政党がつくられた。
このうち共に民主党の「衛星政党」である「共に民主連合」からは、露骨な親北路線を敷き、国家転覆を企図したとして憲法裁判所から強制解散させられた統合進歩党の流れをくむ極左や筋金入りの左翼活動家らの擁立も見込まれている。当選した場合、波紋を呼びそうだ。
与党が過半数を獲得すれば、国政運営に弾みがつく。外交・安保政策では尹大統領が就任以来、力を入れてきた日本との関係改善が一層進み、北東アジアに深刻な脅威となっている北朝鮮や中国への抑止がさらに強化されるとみられる。
逆に与党が過半数割れを喫して共に民主党と革新系野党で過半数を占めた場合、これといった理由がなくても強引に尹大統領弾劾に突き進む可能性がある。内政は滞り、日韓関係をはじめ外交・安保も思い切った政策を取りづらくなる。
総選挙の結果は、3年後の大統領選にも影響を与えそうだ。与党勝利なら韓氏が与党の有力な次期大統領候補になる公算が大きい。共に民主党は李氏に対する敗北の責任論が浮上し、今回の総選挙で新党を立ち上げた曺国元法相が李氏に取って代わる有力候補になるとの見方も出ている。






