
互いにレッドライン守れ
平壌とモスクワとの密着が尋常でない。両国は昨年9月13日に行われたプーチン・金正恩首脳会談以後、急速に絆を強化してきている。首脳会談を前後して北朝鮮が相当量の兵器をロシアに提供したという疑惑がある中で、米国をはじめとする西側は多様な状況証拠を提示してきた。昨年10月中旬、米国家安全保障会議のカービー戦略広報調整官は人工衛星写真に捉えられた羅津港埠頭(ふとう)の物流量の変化を根拠に、北朝鮮が首脳会談を前後してコンテナ1000個以上の軍事装備と弾薬を提供したと表明した。
このような朝露兵器取引と軍事技術協力の疑惑は当然、韓国の安保上の憂慮を増幅させた。尹錫悦大統領は昨年9月20日、国連総会の演説で、もし北朝鮮がロシアに在来型兵器を支援する代価として大量破壊兵器(WMD)の能力強化に必要な情報と技術を得ることになれば、これは大韓民国の安保と平和を直接的に狙った挑発と規定すると表明した。
これに先立ち、プーチン大統領は韓国がウクライナ戦争に介入しないことを要求していた。2022年10月、国際的なロシア専門家フォーラムであるバルダイ会議においてだ。彼は韓国がウクライナに殺傷兵器を提供すれば、韓露関係は破綻を迎えるだろうと警告した。韓国が直接ウクライナに殺傷兵器を提供することをレッドラインと見なすということだ。
このようにウクライナ戦争後に冷却した韓露関係が朝露の軍事協力強化によってさらに悪化した。その上、昨年12月下旬、韓国は建設重装備、二次電池、航空機部品など、軍用転化の可能性がある品目を中心に対露輸出禁止品目を拡大した。ロシアはこれに対する報復措置を予告するなど、韓露関係はさらに硬直した。
綱渡りのような韓露外交関係だ。しかし別の角度から見れば、両国がそういう激しい言葉を使って外交的な舌戦を繰り広げるには、互いに相手方がレッドラインを守ることを願うという意味が内包されているといえよう。韓国に対する露骨な警告と過度な外交攻勢の中でも、モスクワはソウルとの協力再開への希望を表現している。
昨年12月4日、クレムリンで行われた21カ国大使の信任状奉呈式で、プーチン大統領は韓国と関係回復をする準備ができていると言及した。これはロシアが韓国との関係を重視し、これ以上の関係悪化を願わないという意味だ。
韓国はどのように対応しなければならないのか。何よりもロシアに対し、韓国の安保に決定的な脅威になり得る軍事技術を北朝鮮に提供しないよう促さなければならない。一方、ロシアがレッドラインと考えるウクライナへの攻撃用兵器提供には慎重でなければならない。そうして未来のための外交空間を残さなければならない。
韓国近現代史の主要な節目のたびに、ロシアが少なからぬ影響力を及ぼしてきたことを思い起こせば、モスクワとの関係を維持、管理、改善すべき必要があることは自明だ。
(張悳俊(チャンドンジュン)国民大教授、2月9日付)