総選挙を控えた韓国政治 「第三地帯」の2人が対談

2023年12月27日、ソウルで記者会見する韓国与党「国民のカ」元代表の李俊錫氏(EPA時事)
2023年12月27日、ソウルで記者会見する韓国与党「国民のカ」元代表の李俊錫氏(EPA時事)

既存政治・極端政治に「ノー」

4月に総選挙を迎える韓国では与野党の対決の他に「第三地帯」と呼ばれる政治勢力が形成されつつあり、その動向に注目が集まっている。有力者が与党、野党それぞれから分離し、これが統合するか、協力態勢を組むのか、ヨイド(日本でいう永田町)の最大関心事になっているからだ。

東亜日報社が出す総合月刊誌新東亜(2月号)がその渦中の人物2人の対談を企画し、韓国政治の課題と展望を語らせた。2人とは元与党国民の力代表の李俊錫(イジュンソク)氏と野党共に民主党から出て新党を起(た)ち上げようとしている元首相の李洛淵(イナギョン)氏だ。

李俊錫氏は現状を「ヨイド訛(なま)り」と「瑞草洞(ソチョドン)訛り」と表現する。ヨイド訛りとはこの間政治を牛耳ってきた「86世代」(左派学生運動出身者)のことを指しているのに対し、瑞草洞訛りの瑞草洞は韓国大検察庁の所在地で、検事出身の尹錫悦大統領が率いる“検察政治”を表す。

李俊錫氏は「今、韓国社会に86世代に対する敵愾心(てきがいしん)のようなものがだいぶ組織化されつつある」と指摘する。保守政権に代わってから86世代の「従北」などの党派性、組織内の階級性、セクハラ、パワハラ体質が暴かれるようになってきた。若い世代を中心にそうしたものへの反発が表面化してきている。

しかし、だからといって86世代が退いた空間を「瑞草洞文法(やり方)で満たそうということに同意する国民は絶対多数ではない」とも指摘する。“86”か“瑞草”かの二者択一ではなく、そこに第三地帯の入り込む余地があるとの認識だ。

若い李俊錫氏(38)が未練も容赦もなく86世代を切り捨てられるのに対して、86世代に近く、その政権で首相も務めた李洛淵氏(71)は、「民主化のために寄与したことは評価しなければならない。その名誉まで傷を負う現実はとても残念だ」として、彼らが1980年代の韓国民主化で果たした役割に一定の評価を与えたいようだ。

とはいっても、党派性にはうんざりしてきたことも吐露する。「陣営に分かれて自陣営のことは犯罪でも許し、相手陣営のすることは良いことも悪く言う無道徳主義からは抜け出さなければならない」と民主党の体質を批判した。「自分がやればロマンス、他人がすれば不倫」とは文在寅政権で横行したご都合主義だが、李洛淵氏は道徳的にそれに耐えられなかったのだろう。

筆者(岩崎)は李洛淵氏が東亜日報東京特派員時代にセミナーや懇親会で席を同じくすることが多かった。ゴリゴリの記者というよりも柔和な紳士との印象が強かったが、帰国後いくらもせずに政界に出たのを聞いて、志はジャーナリズムではなく政治の方に強くあったのだなと得心したことがある。

その李氏は次の総選挙には出馬せず、今の政治に必要なことは「共存だ」と言うところに有権者の支持を集めて、現在の「両極端政治」に一石を投じようという意志を感じる。

だがこの「共存」や他に「対話」という言葉を強調する勢力にありがちな断固とした姿勢が欠けているのは残念な部分だ。同誌は両氏に対北朝鮮姿勢を聞いているが、李俊錫氏が「韓米日協力強化という大前提に同意する」と言うのに対して、李洛淵氏は「圧迫だけでは北朝鮮の核問題は解決しない。対話を再び始める必要がある」と差異を見せている。

見方を変えれば、それももっともな話で、国内政治が左右両極端政治で行き詰まっており「強対強」では埒(らち)が明かないと言っているのだから、対話や共存を説くのは自然な流れだ。

しかし李俊錫氏が北朝鮮には強い対決姿勢だけで臨むかといえばそうでもなく、「保守陣営は相互主義観点を維持する」として、「北朝鮮の態度変化が対話の前提」と条件は出している。この両者の違いを有権者がどう見るかが一つのポイントとなろう。

同誌は時宜を得た対談特集を組んだ。第三地帯に似た現象は先の台湾総統選でも現れ、一定の役割を果たした。韓国総選挙で彼らが何に化けていくかはまだ予測がつかない。

(岩崎 哲)

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