韓流が体制の脅威に 北朝鮮 関連3法で取り締まり 民心転換へ戦争モード

統一問題にも影響か

韓 流 に は ま る 北 朝 鮮 住 民 の 実 態 を 語 る 脱 北 者 ( 2 0 2 0 年 放 映 の 韓 国 テ レ ビ 番 組 か ら )

韓国をもはや同民族ではなく「第一の敵国」と見なし、核攻撃も辞さない構えを見せる北朝鮮。こうした態度は今年国政選挙を控える米国や韓国に対する心理的な圧迫効果を狙ったものとみられるが、一方で国内に流入し続ける韓流を遮断する必要性に迫られ、内部引き締めを図るためでもあるとの見方が出ている。北朝鮮の韓流への警戒心は確かに尋常ではない。(ソウル・上田勇実)

北朝鮮内部に独自の情報源を置く韓国ネットメディア「デイリーNK」が1日、北朝鮮平安北道(北西部)の消息筋の話として伝えたところによると、最近、国家保衛省はメモリーカードを所持している人を見つけた場合、その中に保存された韓国の映画やドラマを視聴したり、他の人に流布したりしたという嫌疑を掛け、処罰の対象にしている。

実際、同道の新義州に在住する30代男性がSDカードを所持していたとして現在、予審を受けているという。SDカードには北朝鮮の歌などが保存されていただけで、韓流関連のコンテンツはなかったが、こうしたメモリーカードを所持しているだけで当局から「韓国の映画やドラマ、歌など外部情報に接した可能性がある者と見なされる」という。

北朝鮮にとって韓流が体制の脅威になっていることの証左として挙げられるのが、北朝鮮が取り締まりに向け作った関連3法だ。

2020年制定の「反動思想文化排撃法」は、その名の通り「反動的な思想文化、反社会主義思想文化の流入、流布を防ぐ」のが目的。「国境」「出版・宣伝物」「対外事業と該当機関」「電波、インターネット」「ビラ」を通じた流入・流布を遮断することを義務付け、「コンピューター、記憶媒体」「テレビ、ラジオ」「コピー機、印刷機」「携帯電話」などを使った視聴や流布を禁じている。

これらに違反すれば罰金刑から一般刑務所での懲役刑である「5年以上10年以下の労働教化刑」、重いもので「無期労働教化刑」などが科せられる。

北朝鮮は同法にとどまらず「青年教養保障法」(21年)と「平壌文化語保護法」(23年)を相次いで作った。前者は韓流の影響を受けやすい青年層の取り締まり強化、後者は映画やドラマの影響で韓国語をまねる風潮が広がったことで、これを禁止するための措置だ。

北朝鮮では近年、男性の恋人や夫を呼ぶ時に使う「オッパ(お兄さん)」や資本主義社会で用いられる「サジャンニム(社長)」などの呼称を使う人が増えているといい、「言葉から浸透する韓流」の遮断にも神経をとがらせている。

北朝鮮が今回、戦争も辞さない強硬路線を打ち出したのは「韓流にかぶれた民心を転換させるため戦争モードを醸し出す」(南成旭・高麗大学教授)ためだったとみられる。 一方、北朝鮮への韓流浸透は南北統一にまで影響を与えているとする見方もある。今回、北朝鮮は南北統一と関連し、南(韓国)を「同民族で統一の対象」ではなく「敵国」と位置付けた。これは「韓流で認識された南の優位性がこれまで主張してきた北中心の南北統一に説得力を持たせづらくしている問題をクリアするための苦肉の策」(北朝鮮問題専門家)だというのだ。敵であれば北中心の統一か南中心の統一かで悩まなくて済むわけだ。

デイリーNKの昨年8月の報道によると、関連3法に違反したとして全国で摘発された人々がその家族らと共に、最も過酷な環境で一度入ったら生きて出て来られないと言われる政治犯収容所「价川第14号管理所」(平安南道)に大量収容されたという。

これが事実なら、韓流に染まっただけで連座制まで適用され、家族ごと一生収容所暮らしにさせるという超法規的な厳罰を科すほど、金正恩総書記は韓流に脅威を抱いているということかもしれない。

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