韓国総選挙 次期大統領選の前哨戦か  野党圧勝なら尹氏弾劾も 選挙イヤー2024 民主主義陣営の危機(3)

尹錫悦大統領と国民の力の韓東勲 ・非常対策委員長(写真右 (EPA時事)

4月10日投開票の第22代韓国総選挙まで3カ月余りとなったが、その行方はまだ混沌(こんとん)としている。

選挙は保守系の与党「国民の力」と革新系の最大野党「共に民主党」による事実上の一騎打ちが予想されるが、支持率30%台の低迷が続く尹錫悦大統領を中心とする与党も、代表の李在明氏が市長・知事時代の背任・収賄容疑などで起訴され裁判中の共に民主党も、国民から幅広い支持を取り付けられないでいるためだ。

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ただ、選挙の行方は今後の韓国を大きく左右するとみられている。特に劣勢が伝えられてきた与党が過半数割れして負けた場合、現在のねじれ国会の弊害が任期末まで続き、内政を中心に政権運営に支障が生じるのは避けられない。

また仮に国会在籍議員(300人)の3分の2以上である180議席を野党陣営が獲得した場合、多くの識者は尹氏が弾劾訴追に追い込まれる可能性が十分あるとみている。尹政権にとって今回の総選挙は土俵際に立たされた戦いと言えよう。

与党敗北なら尹政権が求心力を失い、得意としてきた外交・安全保障政策まで悪影響が及ぶとの見方もある。歴史認識問題などによる悪化を食い止め、劇的に改善させた日本との関係、北朝鮮や中国の軍事的脅威に対抗する日韓米3カ国の連携などが再び滞るのではないかとの懸念がくすぶる。

だが、与党にも好材料はある。かねて周囲の評価が高く、政治指導者としての人気や期待感が急上昇している韓東勲前法相が昨年末、与党内紛を収拾する非常対策委員長に抜擢(ばってき)され、有力な次期大統領候補の一人にまで数えられるようになった。韓氏を事実上のトップとする与党が野党と互角の戦いをできる可能性が生じたと言える。

その意味で今回の総選挙を「有力な大統領候補同士が与野党を率いてぶつかる、次期大統領選の前哨戦という性格を帯びる」(厳●◆・時代精神研究所所長)とみる向きもある。

共に民主党の李 在明代表(EP A時事)

選挙までの3カ月間に情勢を左右する要因に挙げられるのは、与野党ともに抱える分裂のリスクだ。与党は元党代表で若者受けがいい李俊錫氏が新党立ち上げを宣言。共に民主党もかつて李在明氏と党内候補争いを演じた李洛淵元首相が、一部の党非主流派と合流して新党を結成するとみられている。

これらが与野党一騎打ちの構図に何かしら影響を及ぼせば、情勢は複雑化する。

韓氏は与党非常対策委員長に就任した際、今回の総選挙の意味を「(左翼)学生運動出身の特定政治を清算せよという強力な時代精神(=時代の要求)」「李在明代表がその熱烈支持者たちと結託し自分たちが生き残るため国をダメにするのを防ぐ(戦い)」と説明した。

検事時代、政権の意向に反する捜査を指揮して左遷されながら志を曲げなかった韓氏の姿勢から考え、これは単なる政治的レトリックではなく、韓国社会の深刻な左傾化に警鐘を鳴らしたものだった。

時事評論家の金大鎬「社会デザイン研究所」所長も「悲劇的なことだが、国が崩壊しようが政敵と争奪戦をやるメンタルを持っているのが現在の共に民主党」と指摘する。

だが、こうした危機意識が国民の間で広く共有されているとは言い難く、大上段に構えてもカギを握る浮動票をどこまで取り込めるかは不透明だ。

年明けに発表された直近の各種世論調査で与党と共に民主党の支持率は「39%対34%」(韓国ギャラップ)、「36%対35%」(韓国リサーチ)、「34%対37%」(イプソス・コリア)などと拮抗している。

全有権者の3分の2を占め、実際に投票所に足を運ぶ比率が他の年齢層より高い60歳以上の多くが保守的であるため「与党有利」とはじき出す予想もあるが、2日に起きた李在明氏襲撃事件など韓国政治には突発的出来事も多く、予断を許さない。

(ソウル・上田勇実)

●=炯を火を土へんに ◆=火へんに英

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