4代目後継者は本当に娘か 北朝鮮 金ジュエ氏の露出頻繁 

「息子いるはず」の見方も 韓国政府、分析定まらず

昨年11月に北朝鮮メディアに初登場してから1年以上経過した金正恩総書記の娘ジュエ氏(10歳前後)。父親に帯同され軍関連の行事などに頻繁に姿を現すことから国際社会の耳目を集め、4代目後継者に内定したとの観測も広がる。ただ、未確認ながらジュエ氏の上には息子がいるとの情報もあり、韓国政府内でも分析は定まっていないようだ。(ソウル・上田勇実)

先月30日、朝鮮人民軍空軍司令部を視察 した金正恩総書記と娘のジュエ氏(北朝 鮮の月刊画報「朝鮮」12月号から)

ジュエ氏が北朝鮮国営の労働新聞や朝鮮中央テレビなどに初登場したのは昨年11月18日。新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17型」の試験発射現場を視察した正恩氏に連れられる写真が公開された。

それ以降、ジュエ氏の動静報道は公式的に確認されたものだけで19回(先週末現在)に達し、うち16回は軍関連のもの。自由アジア放送は先月、消息筋の話として、党組織指導部の講演会で「宇宙強国時代の未来は『朝鮮の新星・女将軍』によって今後さらに輝くだろう」という発言があったと伝えた。これを巡りジュエ氏に「新星・女将軍」の尊称が与えられたとの見方が出ている。

これまで北朝鮮では「白頭山3大将軍」として1代目の金日成主席、2代目の金正日総書記、金主席の正妻で正日氏の生母の金正淑氏の3人に「白頭山将軍」の呼称が付与され、2017年に正恩氏が「もうひと方の白頭山偉人」と称されたことで、正恩氏が4人目の「白頭山将軍」になったとの見方が出ていた。

報道が事実なら、4人にしか与えられていない「白頭山将軍」の地位が、ジュエ氏にまで与えられたと見ることも不可能ではない。

日朝関係筋が北朝鮮の権力中枢に近い関係者からの話として伝えたところによると、正恩氏と妻・李雪主氏との間には娘2人がいて、今のところ息子はいないという。公開された動静だけでも正恩氏がジュエ氏を寵愛(ちょうあい)する姿が目立っているが、それは単に人目もはばからない「親ばか」だったわけではなく、ジュエ氏を4代目後継者にする考えを内外に誇示するのが狙いだった可能性もあるわけだ。

ただ、一方で息子が存在するとの情報もある。今年3月、韓国の情報機関、国家情報院(国情院)は国会での非公開報告で、正恩氏の第1子は長男で、ジュエ氏は第2子、さらに性別不明の第3子もいるとの見方を明らかにした。

その後、国情院は見解を修正し、ジュエ氏の4代目後継可能性を否定していない。息子はいても正恩氏の兄、正哲氏が「あれはオンナみたいでダメだ」と父、正日氏から烙印(らくいん)を押されて後継者レースから外れたと言われているように、正恩氏の長男にも後継者としての資質に問題がある可能性も排除できない。

また、そもそも仮に正妻が息子を授からなくても、「あの独裁体制下で正恩氏が側室たちに息子を産ませないとは考えにくい」(元韓国政府系シンクタンク幹部)のも確かだ。

韓国のある高位脱北者は、李雪主氏に対する呼称から「息子がいるはず」と指摘する。

結婚当初、李氏は名前の後に「同志」という呼称が付けられたが、何年か後に急に「女史」と呼ばれ始めた。北朝鮮で「女史」と呼ばれるのは、金主席の生母の康盤石氏、正日氏の生母の正淑氏、正恩氏の異母弟である平一氏・英一氏の生母の金聖愛氏の3人。いずれも「革命の後継者(息子)を産んだ功績」が認められた場合に限られ、しかも「後継者と必ず結び付けて登場した」という。

今のところ4代目後継を巡り諸説紛々だが、北朝鮮としてはしばらく国際社会の注目だけは引き付けられそうだ。

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