先軍政治の原則損なう?
北朝鮮が軍人を対象にした密輸品流入を禁止するという目的で、軍人と民間人との一切の接触を禁止している。
ラジオ自由アジア放送(RFA)によれば、北の朝鮮人民軍総政治局は先月12日、「部隊の許可なく住民と接触した軍人を処罰する」という内容の指示文を各部隊に発令した。また、北の公安機関兼秘密警察である社会安全部も同月9日、「特別な理由なく軍人と接触を試みたり、警備区域を侵犯した者は厳重に処罰する」という内容の警告文を各人民班に下した。人民班は北で最小の行政単位で、韓国の洞、班など末端行政組織に相当する。
これに伴い、北朝鮮では民間人が軍人と対話など接触を試みる場合、人民軍の憲兵隊である警武部に連行され、その理由を調査されるという。また、北の青年・労働団体である(金日成社会主義)青年同盟所属の不良少年取り締まり班、労働者糾察隊、社会安全部の機動巡察隊、地域安全員および秘密警察である保衛部などの主要組織が、軍・民間接触禁止の監視業務を担当する。両江道の消息筋は、「最近では道端で軍人と会っても挨拶(あいさつ)すらできない」と話した。
北朝鮮のこのように厳格な軍・民間接触禁止措置は新型コロナのパンデミック期間以後初めてといえる。消息筋は北朝鮮のこのような措置は一次的には軍人と民間人との密輸犯罪急増に伴う対応だと説明した。同筋は「医薬品からガソリン、軽油、食糧、軍服、塩に至るまで、多くの物資が軍人と民間人の結託で北朝鮮の市場に流通している」として、「軍が協同農場を通じて得た軍用米の一部を流通過程で横領し、より安いとうもろこしに換えたりもする」と話した。
二次的な理由としては国境地域の密輸、さらには脱北や機密漏洩(ろうえい)などで、軍人と民間人の結託が問題を起こすという分析も出てくる。
だが、北朝鮮当局のこのような措置が「軍民一致」の原則を損なうとの指摘も出ている。北朝鮮は軍を優先する「先軍政治」思想に伴って、「軍と民衆を一致させる」という軍民一致原則を先軍政治の下部原則として持っている。
ここに軍人と民間人との密輸につながる相互依存的な生存関係が、今回の措置によって妨げられ、不満を育て、さらに軍の統制を困難にする可能性があるという解釈も出てくる。
RFAの消息筋は、「軍民一致の伝統が毀損(きそん)されても密輸という悪循環を断ち切るべきだというのが金正恩の決断と統治方式」だとしながら、「軍と民間の生存手段となった市場を当局が壊すことができるかどうかは、見守るべきことだ」と伝えた。
(ヒョン・ジヨン・オンラインニュース記者、12月4日掲載)