体制支持・反米共闘に影響か 北の在外公館閉鎖 経済制裁で外貨稼ぎに支障

中国・東南アジアは工作拠点 朝鮮総連は温存

ベ ト ナ ム の 在 ハ ノ イ 北 朝 鮮 大 使 館 ( 2 0 1 9 年 2 月 撮 影 )

北朝鮮が先月からアフリカや欧州、アジアの在外公館を相次ぎ閉鎖し始めた。背景には国際社会の対北経済制裁に伴い現地での外貨稼ぎに支障が生じたことがあるようだが、今後さらに閉鎖が進めば、非同盟国を中心に働き掛けてきた自国体制への支持取り付けや反米共闘が弱まる可能性もありそうだ。(ソウル・上田勇実、写真も)

北朝鮮の朝鮮中央通信は先月30日、アフリカ南西部のアンゴラと東部のウガンダの駐在大使がそれぞれの国の大統領に離任のあいさつを伝えたと報じた。また今月1日にはスペイン人民共産党がホームページで、駐在臨時代理大使が先月26日付の外交文書で外交使節団の撤収を決定したと明らかにし、さらに香港の総領事館も閉鎖されることが分かった。

韓国政府は、北朝鮮が海外に設置した公館は大使館が47カ所、総領事館が3カ所、国連などの代表部が3カ所の計53カ所になると把握している。今回の閉鎖で大使館2カ所と総領事館1カ所の3カ所が減り、全体で在外公館は50カ所になる。

韓国統一省はアンゴラとウガンダのケースについて「対北制裁の強化で在外公館の外貨稼ぎに支障が生じ、維持が難しくなったため」との見方を示した。スペインや香港の在外公館にも同じような事情があったとみられる。

駐英北朝鮮公使出身の脱北者である与党「国民の力」の太永浩議員は、公使時代に公館維持や生活費捻出のため現地で外貨稼ぎを余儀なくされたと証言している。

現地の外交官たちに外貨稼ぎをさせてまで北朝鮮が在外公館を維持しようとする主な目的は、自国の特殊な体制や反米共闘、北朝鮮式の南北統一などに対する支持を取り付けることにあったといわれる。

こうした目的のため特に非同盟国であるアフリカ諸国との関係強化を重視してきた。金正恩体制以降は「対北制裁を克服する意味で非同盟国との外交を活発に展開」(同省)。公館の主要業務としては「現地の大学教授や記者に賄賂を渡し、主体思想や金総書記を褒める発言や文章を誘導する」(北朝鮮専門家)ことまであったという。

また在外公館には海外工作の拠点としての役割を持たせる目的もあるといわれてきた。2017年に正恩氏の異母兄、正男氏がマレーシアのクアラルンプール国際空港で暗殺された事件では、在マレーシア北朝鮮大使館の職員が容疑者として特定された。

かつて在香港北朝鮮総領事館にも工作拠点としての役割があったとされるが、「ここ20年は北京や東南アジアが工作拠点の中心となったため香港の重要性は低下した」(同専門家)ことが、今回の閉鎖につながった可能性もある。

スペイン大使館の閉鎖で関心が集まる欧州の北朝鮮公館は、欧州連合(EU)加盟28カ国中、フランスとエストニアを除き実に26カ国にある。

だが、本国の思惑通り欧州各地の北朝鮮公館が活動できているかは疑問だ。当初は北朝鮮との外交関係構築に前向きだったEU諸国も、北朝鮮の核・ミサイル開発がエスカレートするにつれ、北朝鮮への態度を変えた。EU諸国は近年、国連の対北制裁決議に賛成したり、独自制裁に踏み切るなど強硬姿勢を示している。

北朝鮮外務省は一連の在外公館閉鎖について「外交的力量の効率的な再配置」(3日、報道官)と説明しているが、一種の「選択と集中」戦略とみられている。

その意味では事実上の大使館といわれ、かつては巨額資金を本国に送り続け、本国の対韓国工作を側面支援してきた在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)は、どんな状況下でも温存させる公算が大きい。

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