【なぜ韓国は左傾化したか】(6)扇動メディア 労組が牛耳り「陣地戦」

野党代表の捜査に関するニュースを伝える韓国KBS

「最近のテレビやラジオは何かおかしい。ニュース番組なのにどうして特定政党への批判色を前面に出すのか」

<前回>なぜ韓国は左傾化したか(5) 「主思派」登場 神学好きの一大学生が発端

こうした類いの不満が高齢者を中心に韓国の視聴者から聞かれるようになってもう何年にもなる。特に地上波のKBS(韓国放送公社)とMBC(文化放送)、ケーブルテレビ系のニュース専門チャンネルYTNの偏向報道ぶりをいぶかしがる声は増えている。3社はいずれも公営放送であるはずだが、「左派擁護、右派批判」の論調が強く、報道というより扇動に近い。

今年7月、KBSラジオのある時事番組は尹錫悦政権の対北政策について専門家に見解を尋ねたが、韓国でも指折りの親北派学者である李鍾●(=大の両脇に百)・元統一相が出演し、「この一年、この国の平和は何か進展したか?」などと発言した。これに司会者も「朝鮮半島の平和と統一が遠ざかっている」と応じ、2人で尹政権の対北強硬路線を批判する左派系最大野党「共に民主党」の立場を代弁した。

MBCテレビが平日夜8時台に放送する看板番組「ニュースデスク」は、東京電力福島第1原子力発電所の処理水海洋放出を巡る日本や国際原子力機関(IAEA)、太平洋沿岸諸国による会議の様子を伝えながら、反対意見だけをことさら紹介する印象操作を行った。香港漁民のコメントでは、実際の発言内容を捏造(ねつぞう)した字幕まで流したという。

韓国メディアの偏向報道はどのようにして始まったのか。保守紙・東亜日報の記者出身で、メディア左傾化の弊害を是正する関連団体で理事を務める崔寧宰・自由日報編集局長はこう指摘する。

「原因は1980年代の大学で新聞や放送に携わった学生たちが受けた訓練にある。当時の左翼学生運動の影響でレーニンの『宣伝・扇動』や北朝鮮の『主体思想言論観』などの理論に基づき、学生運動の本部の一貫した指針に沿って制作した」

報道には客観性や公正さが不可欠だが、学生たちは「メディアを思想の武器、宣伝・扇動の手段、闘争の道具とみなし、卒業後は大手新聞や主要放送局に入り、そこを共産主義的、社会主義的な言論観に変えてしまう『媒体革新運動』を繰り広げた」(崔氏)という。

訓練を受けた学生たちは卒業後、保守論陣を強く張る最大手の朝鮮日報を除く既存メディアに入社し、特に後発の左派系ハンギョレ新聞に数多く入った。そこで労働組合を結成し、親北反米路線の戦闘的デモで知られる全国民主労働組合総連盟(民主労総)の傘下にある言論労組の幹部に。勉強だけして入社した他の新入社員たちはそのムードに引っ張られるしかなかった。政権交代で保守系の社長に代わっても、強大な労組の壁の前では無力に等しい。「悪貨は良貨を駆逐する」である。

崔氏は現在、メディアが扇動的であることの根底には、イタリア革命家アントニオ・グラムシの「陣地戦論」もあると言う。「全面的革命ではないが、社会の各界に陣地を築いて社会を変化させ、その闘争手段としてメディアは極めて有効であり、記者一人一人が重要」という思想だ。

近年は若者をターゲットに国内最大のポータルサイト「ネイバー」やモバイルメッセンジャーアプリ「カカオトーク」に提供される各種コンテンツにも影響を与えている。

崔氏もかつて全国大学放送記者連合会の会長として学内メディアの左傾化に加担したが、30代初めに疑問を抱き転向。だからこそ扇動メディアの「心理」を熟知する。「世代と構造の問題。簡単には解決できない」と崔氏は述べた。(ソウル・上田勇実)

spot_img
Google Translate »