Home国際朝鮮半島癒えぬ大惨事の傷跡―ソウル雑踏事故から1年

癒えぬ大惨事の傷跡―ソウル雑踏事故から1年

現場の繁華街・梨泰院は閑散

ソウル・梨泰院の中心街は中央に柵が設置され、片側一方通行で歩くよう案内されていた(27日午後5時過ぎ/宇野泰弘撮影)
ソウル・梨泰院の中心街は中央に柵が設置され、片側一方通行で歩くよう案内されていた(27日午後5時過ぎ/宇野泰弘撮影)

ハロウィーン控え厳戒体制

【ソウル早川俊行】ソウル市の繁華街、梨泰院で起きた雑踏事故から29日で1年を迎える。日本人2人を含む159人が犠牲になった大惨事の傷跡はあまりにも深く、事件現場では依然、重苦しい空気が漂う。一方、10月末のハロウィーン前後には人出が増えると予想されることから、梨泰院を含め若者に人気のある地域には多くの警官が配置され、事故再発防止のための厳戒態勢が敷かれている。

「事故から1年が経って現場に来てみたが、事故を防ぐ対策ができているのか疑問に思う。同じような事故が起きないことを願っている」
 
27日午後5時過ぎに事故が起きた梨泰院の細い路地を訪れた男性は、世界日報の取材にこう語った。男性は事故で大学時代の友人を失ったという。

ハロウィーンを控え、厳戒態勢が敷かれているソウル・梨泰院。黄色いベストを着た若い警備スタッフの姿も(27日午後5時過ぎ/宇野泰弘撮影)
ハロウィーンを控え、厳戒態勢が敷かれているソウル・梨泰院。黄色いベストを着た若い警備スタッフの姿も(27日午後5時過ぎ/宇野泰弘撮影)

また、路地沿いにあるコンビニエンスストアで働く男性店員は「事故が起きてから梨泰院が変わってしまった。若者たちが集まって騒ぐのはいいが、命を大切にする行動を心がけてほしい」と、暗い表情で話した。
 
ハロウィーンを控え、梨泰院では多くの警官や地元関係者が警戒に当たっていた。若者たちが殺到して身動きが取れなくなってしまった反省を踏まえ、事故現場の路地に一方通行の看板を設置。また、お洒落なレストランやバーが立ち並ぶ通りには、通行人の歩く方向を分ける柵を設置し、密集状態を防ぐ対策を講じていた。
 
ただ、悲劇から1年という節目に事故現場で飲食を楽しむ雰囲気はなく、通行人はまばらだった。活気に溢れたかつての面影は消えたままだ。
 
 事故現場の路地の一角には、犠牲者を慰霊するスペースが設置されている。通りかかった市民らが追悼のメッセージを書き込み、壁に貼り付ける姿が見られた。
 
一方、グルメやショッピングで人気の弘大地区を訪れると、梨泰院とは対照的に多くの若者や観光客で賑わっていた。10月末のハロウィーンに向けて人出が増えると見込まれることから、繁華街のあちこちで警官が人の流れを誘導するなどの警戒措置を取っていた。

ソウル・梨泰院の雑踏事故現場で追悼メッセージを貼り付ける女性(27日午後5時過ぎ/宇野泰弘撮影)
ソウル・梨泰院の雑踏事故現場で追悼メッセージを貼り付ける女性(27日午後5時過ぎ/宇野泰弘撮影)

遺族や被害者からは、原因究明が不十分だとして韓国政府を批判する声が上がっている。事故で娘を失った柳炯宇・梨泰院惨事遺族協議会副委員長は、26日にソウル外信記者クラブで記者会見し、「惨事から1年が経ったが、真相は明らかにされず、誰も責任を取っていない」と主張した。また、弟が犠牲になったオーストリア籍のキム・ナリさん(33)は、政府が非難の矛先を被害者に向けているとし、「非情で残酷で恥ずべきことだ」と痛烈に批判した。

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