【なぜ韓国は左傾化したか】(4)「386世代」革命家にならずも共通認識

経営する海鮮料理店で取材に応じた咸雲􀀀氏(全羅北道群山市、8日撮影)
経営する海鮮料理店で取材に応じた咸雲􀀀氏(全羅北道群山市、8日撮影)

韓国左傾化の最大の原動力は、1980年代に起こった左翼学生運動だった。背後にはそれ以前からの北朝鮮による対南工作があり、「北朝鮮に友好的な勢力を韓国内に育て、その人たちに戦わせようとした」(柳東烈・元韓国警察庁公安問題研究所研究官)。その友好勢力の代表格が学生運動のメンバーたちだ。

<前回>【なぜ韓国は左傾化したか】 (3) 「金日成奨学生」国家観歪んだ司法受験生

ソウル大学学生運動のリーダーだった85年、ソウル米文化院占拠・籠城事件を起こして首謀者として逮捕され、後に北朝鮮の実態に失望して反北朝鮮に転じた咸雲炅氏を訪ねた。

同民族同士が殺し合った朝鮮戦争(1950~53年)を経て、韓国は北朝鮮を主敵とみなし、反共を国是としたが、それに反感を抱く一部の人が地下活動を行い、それが全国の大学に広がったのが80年代。80年にクーデターで実権を握った全斗煥政権が光州で起きた民主化運動を弾圧し、市民にも多数の死傷者が出た光州事件を契機に全政権が掲げる反共政策にも疑問を抱き始めた。政権と戦う上で理論武装の必要性を感じた学生たちが取り入れたのがマルクス・レーニン主義だった。

咸氏は自らも経験した、大学生たちが全国規模で運動に没頭していくプロセスを「世界的にも珍しい現象」だとして、次のように説明した。

「大学1年生は過去の考え方を壊す第1段階。反共は間違いだと主張したハンギョレ新聞の創設者、宋建鎬氏などの知識人通じ共産主義を学ぶ。2年生ではマルクスの哲学や経済で意識化され、政権を打倒し共産主義の理想世界を目指そうと考えるようになる」

「このまま革命家の道に進むか、大学で正規の学士を取って世間体のいいコースを歩むか葛藤するのが3年生。前者を選択した4年生はデモを主導して捕まる覚悟を持つか、前科なしに工場に偽装就職して労働者たちを革命運動家の主役に育てるかを決めていく」

咸氏はデモを主導して捕まった口だが、逮捕の翌年、学生運動に大きな転機が訪れた。それまで理論武装のよりどころとしていたマルクス・レーニン主義に代わり、北朝鮮の主体思想を大勢が信奉し始め、学生運動を席巻するまでに至ったのだ。

学生たちは主体思想のいったいどこに惹(ひ)かれたのか。咸氏は「民族自決や自主独立などで米国や日本に対する憎悪を呼び起こさせられ、韓国社会の基本情緒である民族主義も受け入れの土壌になったのではないか」と言う。

咸氏をはじめ当時の大学生は、入学早々に各サークルで『解放前後史の認識』などの必読書を読むよう先輩たちから言われる。これらを読むと、「韓国は親日派たちが解放直後に清算されないまま既得権を握り、初代大統領の李承晩が彼らを重用し、米国の権威を笠(かさ)に着て、独立運動出身者たちを虐げた国と考えるようになる」(咸氏)。

だからこそ80年代から90年代にかけて大学に通った、現在の40代・50代は反日・反米に共感し、親北・親中を支持する。国政選挙などで反保守の候補に投票し続ける理由でもある。

咸氏のように80年代に学生運動に浸った60年代生まれの、その言葉ができた当時30代だった人たちを韓国では「386世代」と呼び、それから20年を経て「586世代」となった。彼らの多くは大学卒業後、実際には革命家の道を選ぶことなく、社会人になったが、「学生時代に叩(たた)き込まれた歴史認識などが今なお頭の中を支配している」(咸氏)。

(韓国全羅北道群山・上田勇実)

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