
韓国の左派系最大野党「共に民主党」の李在明代表に対する国会の逮捕同意案が所属議員多数が造反したことで可決され、李氏が逮捕される可能性が出てきた。26日にも裁判所が令状発付を判断するが、その如何(いかん)にかかわらず、李氏のリーダーシップ失墜は必至。同党への打撃が予想され、来年4月の総選挙にも影響が出そうだ。(ソウル・上田勇実)
国会多数派を占める民主党は尹錫悦政権発足後、同党議員たちに出された逮捕同意案にことごとく反対し、全て否決されてきた。しかし、今回は出席議員295人の過半数となる149人が賛成票、136人が反対票をそれぞれ投じ、同意案が可決されてしまった。同党の全議員(168議席)のうちもともとの非主流派を中心に少なくとも29人、棄権や無効を合わせると最大39人が造反したことになる。
可決後、同党の主流派議員らは予想外の結果にショックを隠せない様子だった。先月末からハンガーストライキ中だった李氏は国会表決の前日、6月に表明したばかりの「不逮捕特権放棄」の方針を覆し、自身のメタ(旧フェイスブック)に同意案否決を促すメッセージをアップしていた。これが裏目に出たとの見方が広がっている。
「国政の刷新」や「内閣総辞職」を求めて続けていたハンストも、支持者の同情と結束にはつながったものの、党非主流派の心を掴むまでには至らなかったようだ。ドクターストップもかかり、24日目で中止した。
国会周辺に終結していた熱烈な支持者たちの多くは、可決の報に触れると悲鳴を上げたり、溜(た)め息を漏らし、抗議のため国会侵入を企てようとした一部の人たちが警察ともみ合いになる騒動も発生した。
李氏を巡る疑惑は数年前から浮上していた。今回の逮捕状請求に関する「犯罪事実」には、城南市長や京畿道知事の在任中に自身の政治的目的のために起こした、大型宅地開発を舞台にした不透明な巨額の利益捻出や暴力団出身の実業家らと手を組んで行った北朝鮮への巨額不正送金などが盛り込まれた。尹政権発足を機に各種疑惑に対する在宅起訴や逮捕状請求(国会で同意案否決)など司法手続きが進められ、保守層の間では捜査のメスが「本丸」(李氏逮捕)に至ることへの期待が高まっていた。
逮捕同意案の「要請理由」を国会表決直前に説明した韓東勲法相は、「李在明議員の共犯や関係者として逮捕されたのは21人にも上り、在宅起訴された人はもっと多い。この大規模不正の頂点には李在明議員がおり、李議員抜きにしてすでに逮捕された人たちの犯罪事実は成立し得ない構造だ」と指摘した。
韓法相は、宅地開発を巡る利益捻出の動機について、李氏が「今後の選挙資金、政治資金にしようとした」ことだったと述べた。また対北不正送金に関しては、国連安保理の対北制裁決議に違反するという意味からも「国家綱紀の紊乱(びんらん)に近い重大犯罪」と断じた。
民主党は仮に李氏が逮捕されても代表として支え続ける方針。ただ、李氏は「廃位されて流罪で監禁されたような状態になり、令状が棄却されてもすでにリーダーシップは失墜し、このまま(来年の)総選挙を戦うのは難しい」(与党幹部)状況だ。
今回の件で院内代表をはじめ一部執行部は辞任したものの、造反者続出で党内に入った亀裂を修復させるのは簡単ではなさそうだ。
世論調査機関の韓国ギャラップが先週実施した調査によると、検察による李氏への令状請求について「正当」(46%)が「不当」(37%)を上回った。「不正の頂点」にいる李氏への国民の失望が広がっていることを物語っている。
ポスト李在明には元首相の李洛淵氏などが取り沙汰されそうだが、李氏に近い主流派と今回造反した非主流派による主導権争いの行方は予断を許さない。総選挙まで約半年だが、党の内紛が長引き、選挙で過半数割れを喫した場合、これまで同党の「多数派の壁」に遮られてきた尹政権の国政運営に弾みがつく可能性がある。 李氏逮捕に道を開いた今回の国会同意案可決は、さまざまな面で韓国政治の潮目を変えるものになるかもしれない。





