【ポイント解説】処理水放出を機会として
画期的な提案のようだが多分に夢想的である。韓国の学者はよく「欧州ではこうだ」「ドイツはどうした」と引き合いに出すがアジアの事情とだいぶ違うことは斟酌(しんしゃく)されていない。それに「信頼」とはまず相手に求めて、次に自身が示すものではなく、一般的には、まず自身が信頼し、その後に得るものだ。
だが外交には一般も何もない。国益追究が最優先される場であり「益」が一致していれば、そこに「信頼」という包装がつく。
従って、日本と韓国が原子力エネルギー分野をはじめ、多くの分野で国益が一致するか近いものかを確認していくことが重要だ。尹錫悦政権になって両国関係の改善に拍車が掛かっているのは、尹政権の目指すものと日本の国益が一致し得るからだ。
中国の覇権主義と拡大する軍事的脅威、北朝鮮の核・ミサイル挑発、ロシアのウクライナ侵攻による国際政治の不安定化とサプライチェーンの寸断、等々、日本と韓国が直面している課題は一致している。つまり同じ方向を向いているから互いに手を取り得るのだ。
趙教授の提案は夢想的ではあるものの、でき得る分野から協力して行く、つまり喫緊の課題である処理水放出に関し、協力体制が組めるかどうかを問うており、一つの可能性を示している。
ただ、事故当時の東京電力、民主党が率いた日本政府が「信頼」に足り得なかったからといって、今でもそうだとは言えない。日本は国際原子力機関(IAEA)の監視を受けながら放出作業を進めている。それが信頼できないというなら国連機関を信用できないということと同じだ。
信用を積み上げるには情報の開示が必要だ。2018年の自衛隊機への火器管制レーダー照射事件のように根底に当時の政権が日本を「仮想敵国」と規定していては信頼も何もない。情報開示などするわけがない。「キャンプデービッド原則」を確認し合った国同士として信頼を積み上げていくしかない。
(岩崎 哲)





