
科学は怪談退治の最上の薬
2008年の狂牛病事態は韓国社会が怪談(偽情報)にどれほど簡単に“感染”する体質なのかを見せた。同時に科学はパンデミックのように広がった怪談を退治する最上のワクチンであることを立証した。
韓国進歩連帯など市民・労働団体が民主党の後援の下、「米国産牛肉輸入反対」デモを主導したとすれば、芸能人らはMBC、KBSと共に国民扇動の先鋒(せんぽう)に立った。徐玉植(ソオクシク)大韓言論人会副会長が今年4月に発表した狂牛病芸能人40人の名簿と彼らの怪談を見れば呆(あき)れるほどだ。
「我が国の国教を(牛を食べない)ヒンズー教に変えよう」「米牛肉輸入は命がけの大変恐ろしいことだ」「国民をバカにしているのか。誰かが狂牛病に罹(かか)らなければ分からないのか」等々。あれから15年過ぎたが、米牛肉を食べて狂牛病に罹った人は出てこなかった。
しかし、芸能人らに反省の色はない。106日間の狂牛病デモで3兆7513億ウォンの社会・経済的損失が発生した。一抹の責任を感じるのが公人の道理ではないか。
問題なのは狂牛病怪談から教訓を得ず、今度はまた汚染水怪談を拡散する芸能人らがいるという点だ。国際原子力機関(IAEA)が今月5日、日本の福島(第1原発)汚染水の海洋放出計画に対して国際安全基準に符合するという最終報告書を出したが、彼らの耳にはたわ言に聞こえるようだ。
8日に歌手のリアは福島第1原発沖から直接汲(く)んできた海水を「飲めると言ったでしょ」と、駐韓日本大使館に渡そうとして警察に制止された。汚染水放出前の海水に何の意味があるのか疑問だ。
鄭ボムジン慶煕大原子力工学科教授は、「2011年の福島原発事故当時、汚染水300㌧が海に流れ込んだが、今まで韓国に影響は現れていない」とし、「現在、日本が処理した汚染水は放射性物質が11年当時の0・05%にもならない」と述べている。
コメディアンの徐承満(ソスンマン)は10日、ユーチューブで「核廃水を推奨するグロッシの奴は外国で250人殺した殺人鬼よりも多くの韓国民の人命被害を出し得る。爆弾やダイナマイトを持ってくる奴よりひどいのに歓迎するとは…」と、グロッシIAEA事務局長の入国阻止デモを擁護した。
福島の汚染水は放出されなければ良いが、国際基準に符合する以上、防ぐ方法はない。それなら非科学的で無茶な主張を展開するのではなく、放出されても韓国の水産物は安全だから安心して食べてほしいというのが正道だ。
科学は怪談との戦いにいつも勝利してきた。汚染水怪談を追加する芸能人がこれ以上出ないことを願う。怪談に賭けるのは、狂牛病芸能人のように「悔恨を予約した」ことになる点を留意すべきだ。
(金煥基論説室長、7月25日付)