
超連結社会の息抜きに
カカオトーク(無料通話・メッセンジャーアプリ)がグループ・チャットルームから“静かに退室”できる機能を先月リリースし、機能追加から二十数日で何と200万人がこの機能を使った。「人知れず離脱できるとは!」とチャットルームノイローゼに苦しめられた人々は快哉を叫んだ。
世の中は個人の自由と自律を強化する方式へと急速に変わりつつあるが、われわれの社会のあちこちには集団的規則が蔓延(まんえん)している。自律よりは他律と惰性が職場だけでなく日常までも支配する。これに「パリ、パリ(速く、速く)」に代弁される、効率を重視する韓国特有の文化も一役買っている。
グループ・チャットルームは業務と日常を問わずコミュニケーションと問題解決に必要な手段となっている。効率的なつながりはデジタル社会の祝福だが、現実では参加理由不明の場合が頻繁にある。上司と家族、友人らの勧めを断れず入るケースが少なくない。その目的と効用が尽きれば閉鎖するのが当然だが、何だか分からないプレッシャーや気遣いで、誰も気軽に部屋を離れることができない。
最近の世代は“緩い連帯”を望んでいる。バスに乗って降りるように、自分が望む時、簡単に参加し離脱できる柔軟な関係を好む。硬直したチームプレーや仕事の仕方は自分の価値に逆行すると感じる。
家族と日常も同じだ。非婚とディンク族(子供を持とうとしない共働き夫婦)の日常化が示すように、硬直した家族形態や“年長の言うことを無条件に聞く”家族の集い(法事や年末年始の集まり)も警戒の対象になる。
自身が統制できて予測可能な人生を望む新人類には、他律化したグループ・チャットルームは始まりと終わりもはっきりせず、目的意識も欠如した惰性の象徴に映る。
代案は何か。まず、業務と関連したコミュニケーションはできるだけEメールや公式のメッセンジャーで行うのが望ましい。次に、用の終わったグループ・チャットルームは躊躇(ちゅうちょ)なく閉鎖する知恵が必要だ。第3に、静かに出て行った人たちをできるだけ呼び戻すのをやめよう。
“静かに出て行った200万人”は、一個人がもう少し幸せな柔軟な社会に対する熱望を表現しているのではないか。フランスなど西欧で活発に議論されている“連結されない権利”は非現実的に思われるかもしれないが、デジタル遊牧民である最近の世代には一つの権利と認識されている。息が詰まる超連結社会で息抜きをしてくれる大切な資産と見ることはできないだろうか。
(ク・ジョンウ成均館大教授・社会学、6月19日付)