トップ国際朝鮮半島日本重視、中国には毅然と 韓国改定「国家安保戦略」文前政権の“平和ショー”削除

日本重視、中国には毅然と 韓国改定「国家安保戦略」文前政権の“平和ショー”削除

北の核脅威「最優先」で対処 対露外交は全面見直し

韓国・尹錫悦政権の国家安保室は先週、安保政策の指針となる「国家安保戦略」を発刊した。日本との協力を重視する一方、中国の覇権主義には毅然(きぜん)と臨むことが盛り込まれた。同書は5年ぶりの改定で、文在寅政権だった前回発刊時に明記された「終戦宣言」など南北関係を巡る“平和ショー”は全て削除された。(ソウル・上田勇実)

まず同書の記述で目を引くのが日本との関係重視だ。「東アジア外交」の項目には日本、中国、ロシアとの外交が盛り込まれたが、このうち最初に記述されたのが日本。分量も中露いずれと比較しても3倍に達する。

同書は日本について「自由民主主義と市場経済という普遍的価値を共有し、安保・経済など多様な分野で協力する近くて重要な隣国」だとした上で、「歴史問題などで関係がぎくしゃくしたが、厳重な安保環境の下、韓日両国が域内安保協力をはじめ共同の利益と価値に符合する方向へ対応していく必要性が増している」と述べた。

こうした認識は日本側とほぼ一致するもの。文前政権下では元徴用工や慰安婦など歴史認識絡みの問題で露骨な「反日」が繰り返され、日韓関係が戦後最悪と言われるほどまで悪化したが、これを安保協力の重要性を軸に未来志向的に改善させるという方向付けが政府公式文書の形で成されたと言える。

同書は日米韓3カ国の協力も個別の項目として取り上げた。尹氏が昨年5月に大統領に就任して以降、国際会議の場などを利用した日米韓3カ国の首脳会談が繰り返し行われたことに触れ、今年5月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)では「協力のレベルを一段階高めることにした」と指摘。特に「北朝鮮の挑発への対応」や「経済安保」のために3カ国連携が不可欠であることを強調した。

日米韓の連携ムードが広がる中、韓国人の日本に対する好感度はアップしている。政府系シンクタンクの統一研究院が今月5日に明らかにした世論調査によると、3カ国連携の重要性が確認された今年4月の米韓首脳会談を前後し、米国、中国、日本、ロシア、北朝鮮の5カ国の好感度を「プラス5~マイナス5」の範囲内で点数化してもらったところ、会談を前後し最も好感度が上昇したのは0・72ポイント増の日本だった。

一方、対中国外交について同書は、こと「韓国の主権」に関する問題では「原則に基づき一貫性をもって断固対応」するとし、特に韓国に配備された北朝鮮ミサイル迎撃システム「THAAD(高高度防衛ミサイル)」について「われわれの安保主権事案であるとはっきり言う」とくぎを刺した。

ロシアについても、ウクライナ侵攻を非難しながら従来の融和的外交の「全面見直し」が必要との認識が記された。

北朝鮮の軍事的脅威について同書は「現在、北朝鮮の核・大量破壊兵器が韓国が当面する最優先の安保脅威」であるとし、「先制攻撃・ミサイル迎撃・報復」から成る韓国型3軸体制の「能力確保」を目指すことを明記した。一方で、核使用の兆しを早期に把握するため、韓国軍が常時、北朝鮮地域を独自に監視できる偵察衛星や無人機を増強するという。

文前政権が北朝鮮の非核化ロードマップの主要段階とみなした朝鮮戦争の「終戦宣言」や「平和協定」の締結など、非核化に全く無効だった“平和ショー”は同書から削除され、代わりに「南北関係の正常化」が強調された。

文氏は金正恩総書記との首脳会談を繰り返し、一時的に融和ムードが高まってそれに酔いしれる韓国人も少なからずいた。だが、最終的には核・ミサイル脅威が増大するという真逆の結果を招いてしまい、その欠陥が露呈された。

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